「リスクがあっても」 在宅介護とコロナ

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羽田空港でPCR検査を受け、陰性が判明した後、入管を通る前にAさんが受け取った書類
羽田空港でPCR検査を受け、陰性が判明した後、入管を通る前にAさんが受け取った書類

 新型コロナウイルスの影響で、高齢の親と離れて暮らす家族がなかなか会えない状況が続いている。仕事で海外に住むAさん(40代女性、秋田市出身)は今春、80代の父親が体調を崩したため急きょ、一時帰国の必要に迫られた。だが、そこにさまざまな壁が立ちはだかった。

 4月上旬、Aさんは秋田市の実家の母から連絡を受けた。父の体調が悪化して入院したところ、途端に体力、気力共に落ちてしまったという。

 Aさんは当初、今帰るのはリスクが大き過ぎると考えていた。だが次第に心配が募り、上司に相談。テレワーク扱いで帰国する許可を取り付けた。

 東京行きの飛行機の乗客はほとんどいなかったが、自分が使うための除菌ジェルやシート、トイレットペーパーを機内に持ち込み、不特定多数が触る場所には極力触れないようにするなど、コロナを持ち帰らないため細心の注意を払った。

 約12時間のフライトで羽田空港に到着後、PCR検査を受け、そのまま8時間ほど待機。結果は陰性だった。

 羽田から秋田へ向かうレンタカーを手配すると同時に、帰国前から連絡を取っていた秋田市内のホテルに検査結果を伝え、予約を入れた。実家には直接戻らずホテルで14日間、自主隔離(待機)するためだ。

 ホテル待機中は毎朝、保健所から体調を確認する電話が入った。忙しい中、申し訳ない気持ちになった。そうして2週間後、ようやく実家へ戻った。

 先月末、父の体力と気力が少しずつ快方に向かっているのを見届け、Aさんは勤務地に戻った。

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面会制限で「在宅」選択も

 ―今春以降、患者さんの動きに変化はありますか。

 市原 医療機関がコロナ対策で家族の面会を制限している影響で、在宅医療を選ぶ人が増えたと感じる。特に高齢者の場合、家族に会えないことが認知面などに作用し、生きる活力を奪ってしまう恐れがある。

 クリニックで診ている患者さんは約200人。慢性期の方が約6割、終末期は約4割だが、がん末期の方とその家族の選択にも変化が見られる。積極的にできる治療があまりなくなったとき、普段なら「それでも病院の世話になりたい」という人が多いのだが、面会制限を考えて少し早くても入院を切り上げて自宅に帰り、家族と過ごすことを選んでいるようだ。

 ―実際にどんな事例がありましたか。

 市原 ある患者さんは病院でできる治療をほぼ終え、「持って1週間くらい」とのことで退院してきた。だが痛みのコントロールを主とした緩和ケアで対応したところ、少し元気になってくれた。自宅で家族と暮らす中で気力が戻り、次に往診に行くと、家の前で畑仕事をしながら出迎えてくれた。「今週末は温泉に行ってくる」と話し、実際に家族旅行を楽しむこともできた。他にも行きたい所があると話してくれたが、それは残念ながらかなわず、最後はホスピスへ入られて約2週間で亡くなった。在宅で過ごせた期間は約2カ月。一概には言えないが、家族と一緒に「人生の良い最期」を過ごせたのではないかと感じた。

 ―これからお盆の帰省の時期を迎えます。

 市原 現状では、県外からウイルスが持ち込まれるリスクが圧倒的に高い。「家族を見舞いに帰りたい」と県外から相談をもらった場合は、できるだけ2週間程度は近くのホテルに泊まるなり、家の1階と2階に分けて過ごすなり隔離の対応を取ってもらい、その上で来るようにお願いしている。実際にそうして手順を踏んでくれた人も多くいる。病気は時期を選べないので、全ての帰省を「不要不急」とは言えない。

 ―コロナ感染予防に関連して、在宅医療ならではの難しさはありますか。

 市原 在宅医療の現場はまさに各家庭の中、地域の中にある。医療と暮らしが地続きにあるのが在宅の良さだが、だからこそ一層の感染予防の徹底が必要だ。われわれ医療スタッフは一軒一軒に直接出向き、世話をする。1人で複数の家を回るため、どこか1軒にウイルスがあれば、次の家にもウイルスを運んでしまう恐れがある。そうなれば全ての在宅医療がストップしてしまう。地域の中で医療を提供するという、今ある機能を維持していくために試行錯誤しながら、より良いケアの在り方を考えていく。ここは何としても患者さんやご家族、一人一人の協力をお願いしたい。

 ―在宅介護を担う同居の家族が心掛けることは。

 市原 頑張り過ぎないでほしい、というのが第一。抱え過ぎるとポキッと折れてしまう。医療や福祉のプロのサポートを積極的に利用し、暮らしを回す意識を持ってほしい。患者さんはみんな、家で過ごせるだけでうれしいと思っている。