北斗星(8月10日付)

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 穂がこうべを垂れ始めていた。稲の丈は1メートルほど。しばらく見ない間に、たくましく伸びている。実が充実しつつあるようだ。今年の作柄は平年並みの予測。新米を頬張る日が今から待ち遠しい

▼秋には県種苗交換会が横手市で開かれる。自慢の農作物を競う農業の祭典だ。太平洋戦争中も途切れず、143回目を迎える。新型コロナウイルスはここにも影を落とす。期間短縮を検討、一部行事は中止するという

▼交換会の生みの親が明治の「聖農」石川理紀之助だ。常に農民側に立ち、貧しい農村の救済に一生をささげた。理紀之助が建てた木造の「備荒倉(びこうそう)」はうっそうとした木々に囲まれ、今も潟上市に残る。毎日食べる米の一部をもみで蓄えて飢饉(ききん)に備えた

▼残されていたこの「100年前の米」を食べたことがある。薄茶色の米が思った以上にうまかった。とぎ汁はコーヒー色だったと炊いてくれた地元の人に聞いた。その前年の1993年は冷害で作柄は「著しい不良」。米不足となり世間が大騒ぎとなった

▼100年前の米は備えを怠った現代人への警告にも思えた。食料は輸入頼りで大丈夫か。飽食に溺れる生活を続けていいのか。そんな疑問を覚えた

▼お盆の帰省を巡り政府は自粛要請を見送る一方、感染防止対策徹底を求めた。感染再拡大の中、不安を解消するとは言えない対応だろう。自ら前面に立ち、困難に挑む指導者の姿が見えない。「寝て居て人を起こす事勿(なか)れ」。理紀之助の言葉が重く響く。

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