社説:日航機墜落35年 事故の記憶を次世代へ

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 日航ジャンボ機が群馬県上野村の「御巣鷹の尾根」に墜落し、520人の命が失われた大事故からきょうで35年。航空史上、単独事故として世界最悪の犠牲者数を数えた。遺族や関係者が高齢化する中、事故から得た教訓をいかに次世代に伝えていくかが大きな課題だ。

 事故は夏真っ盛りの1985年8月12日に発生。羽田発大阪行き日航機には出張の会社員やお盆の帰省客、夏休みの一人旅の子どもら計524人が乗り込んでいた。事故は一瞬にして多くの命を奪い、生存者は4人のみだった。

 国の調査委員会は、同じ機体が7年前に起こした尻もち事故の修理の際、米ボーイング社が機体後部の圧力隔壁の接合ミスを犯し、日航、運輸省が見逃したことが原因と結論付けた。その上で、隔壁などの破壊につながって事故が起きたとした。

 その一方で事故原因に疑問を抱く遺族がいることから、国は事故から26年後の2011年、遺族代表や日航技術陣を加えて分かりやすい解説書を作成しホームページで公開。遺族の心情に寄り添う異例の試みに踏み切った。遺族のみならず、社会に広く情報を発信する取り組みとして評価したい。

 遺族や関係者は毎年8月12日、御巣鷹の尾根への慰霊登山を行っている。今年は7月25、26日と8月11~13日に分散。慰霊式を縮小し、灯籠流しは中止するなど新型コロナウイルス感染防止対策を優先した日程とした。三十三回忌の3年前は遺族359人が参加、過去3番目に多かったが、昨年は276人となった。遺族には80代の人も多く体力に不安を抱えながらの登山。「今年が最後かも」との声が聞かれるようになった。

 事故の記憶を風化させないため、次世代にどうバトンをつないでいけばいいのか。遺族らは、事故で亡くなった子どもが通った小学校で「いのちの授業」を開いたり、事故後の悲しみから立ち直る姿を描いた絵本を出版したりするなどの活動を進めている。若い世代にも積極的に活動の輪を広げ、こうした火を絶やさないことを願う。

 日航は06年、事故機の残骸や遺品を展示する安全啓発センターを羽田空港内に開設。新入社員の研修の場として利用され、一般にも公開されている。

 事故現場に駆け付けるなどした社員に当時の経験を話してもらい、映像化して共有する計画も浮上している。今年3月時点で事故後に入社した社員は96・5%に上る。証言を未来へ語り継ぐ狙いだ。ぜひ実現して、安全への誓いをより確かなものにしてもらいたい。

 新型コロナの影響で日航の4~6月期連結決算は937億円の純損失となり、先月は来年度入社の新卒採用活動の中止を発表した。経営的に非常に厳しい状況にあるとしても、安全への取り組みを後退させることが決してあってはならない。

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