社説:8ミリフィルム資料 県民の永続的な財産に

お気に入りに登録

 県内の家庭に眠るフィルム映像を発掘するプロジェクト「秋田8ミリフィルム・アンソロジー」の活動が本格化している。住民目線で記録された映像の数々を、地域の共有財産として次世代に引き継いでいきたい。

 8ミリフィルムは戦前に登場したが、普及が進んだのは1960年代。家庭などで身近な出来事や風景などの撮影に用いられた。しかし、80年代以降はビデオカメラに押され衰退。現在ではメーカーによるフィルムの製造・販売は終了している。

 普及から半世紀が過ぎ、所有者が代替わりする中で、庶民の目線に立った貴重な記録が散逸してしまいかねない。収集、保存できれば歴史資料として高い価値を持つことが期待される。

 プロジェクトは8ミリフィルムの存在に改めて目を向け、まちの共有財産として保存、活用することが目標。秋田公立美術大の石山友美准教授が中心となり、昨年3月に活動を始めた。家庭などに眠るフィルムを募集したところ、これまでに鹿角市や男鹿市、湯沢市など県内各地の約80人から、計約千本が寄せられた。

 映写機が壊れてから40年以上、フィルムを保存していた人が、募集を知って連絡した例もあったという。フィルムに収められた数十年前の結婚式や小学校の運動会、家族旅行、地元の祭りなどは当時の人には身近な出来事であっても、今では寄せられた映像以外では目にすることができないものだ。

 中でも貴重なのが、戦後間もない48年ごろに連合国軍総司令部(GHQ)の少佐が県内で撮影した16ミリフィルム。占領下での選挙の開票作業や、男性のみで行われていた頃の竿燈の様子などが記録されていた。先頃秋田市内で開かれた上映会には多くの市民が足を運び、歴史的映像に見入った。プロジェクトの大きな成果といえるだろう。

 同様の活動は全国でも広がり始めている。先駆的な試みの一つが本県で展開されていることを歓迎したい。ただ、フィルムを保存・管理し、デジタル化するなどして活用する取り組みを、誰がどのようにして永続的に担っていくかが課題だ。

 石山准教授によると、デジタルデータは電子的な破損などの恐れがあるため、オリジナルのフィルムも保管していくのが望ましい。しかし、カビの発生や劣化を防ぐためには一定の設備が必要となり、民間団体だけでは困難な面がある。

 持続可能なアーカイブ(資料・記録の保管所)の構築が望まれる。映像の保管は行政の施設で行い、その運営や活用は民間団体が担うなど、さまざまな形態が考えられるのではないか。

 秋田市の県公文書館は過去に県が制作した広報映画を保存し、上映会を開催している。個人が撮影、保管してきた8ミリフィルムについても、官民が連携して保存活用する仕組みを考えていきたい。

秋田の最新ニュース