北斗星(8月14日付)

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 重い黒パンの詰まった麻袋を背負い、収容所までの凍った雪道をよろめきながら歩く。17、18歳の少女にむちを振るい、監視兵がせき立てる。「まるで家畜扱い」。終戦直後のシベリアで少女は捕らわれの身を呪った

▼旧ソ連による日本人女性の強制抑留の一端だ。大仙市生まれのドキュメンタリーディレクター、小柳ちひろさんの近著「女たちのシベリア抑留」(文芸春秋)で知った

▼旧日本陸軍病院の看護婦たちには婦長から青酸カリの小瓶が渡された。自決用だ。ソ連兵から辱めを受けるのを恐れた彼女たちにとって何よりの「護身薬」「お守り」だった

▼シベリアから最初の引き揚げ船が日本に到着したのは1946年12月。ソ連はこの船に女性を優先して乗せた。国際社会に人道的な姿勢を示すことで、プロパガンダに利用した側面もあったという

▼そもそもソ連はなぜ日本人女性を抑留したのか。「抑留する意図はなかったと思う」「多くの人を捕らえようとした過程で女性が混ざってしまった」。つまり「手違い」だった。小柳さんの取材に答えたロシア人研究者の言葉に拍子抜けするとともに、怒りが込み上げてきた

▼こんなエピソードも収められている。収容所生活で衰弱した日本人女性は、入院先の病院でソ連人看護婦から献身的な看護を受ける。ソ連への憎悪は「人間は信じ合える。悪いのは戦争なんだ」との思いに変わる。あすは終戦の日。非道で理不尽な戦争の愚を思い、不戦を誓う日である。

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