社説:終戦から75年 専守防衛の原則を守れ

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 きょうは終戦の日。戦後75年の節目を迎えた。戦争という過ちを二度と繰り返さないと、誓いを新たにしたい。

 最近の世論調査では、日本が75年間、戦争をしなかった理由について「憲法9条があったから」と答えた人が最多の47%だった。次に多かったのが「戦争体験者や被爆者が悲惨さを訴えてきたから」の23%。平和主義、戦争放棄を掲げる憲法と太平洋戦争への反省が深く根付いていることがうかがえる。

 太平洋戦争での日本の死者・行方不明者は軍人と民間人合わせて約300万人とされる。犠牲者は日本人だけではない。戦争の理不尽さや悲惨さを語り継ぎ、世代を超えて記憶を共有して教訓を学び続けたい。

 一方、気掛かりな動きがある。自民党が政府の国家安全保障会議(NSC)に「敵基地攻撃能力」保有を提言した。政府は来月中にも方向性を示す。

 敵基地攻撃能力は、相手国の弾道ミサイル発射基地などを攻撃する能力を指す。歴代政権は他に防御手段がない場合に限り、基地を攻撃することは「自衛の範囲」としてきた。ただし「専守防衛」の立場から保有はしてこなかった。

 敵基地攻撃能力が急浮上したきっかけは、本県と山口県の2カ所に地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」を配備する計画を政府が6月下旬に断念したことだった。自民党内の議論はわずか1カ月ほど。地上イージス断念の経緯を検証するのが先だろう。

 敵基地攻撃能力への政府の前のめりな姿勢には違和感を覚える。専守防衛を逸脱し、防衛政策の大転換につながらないか懸念される。専守防衛を第一とした慎重な議論が求められる。

 敵基地攻撃能力保有には高性能な防衛装備品だけでなく、相手国のミサイル発射基地の位置を割り出すなど高度な情報収集力が不可欠。多大な費用を要する点も無視できない。

 2003年、当時の石破茂防衛庁長官は、他国が日本への攻撃の意思を表明し、ミサイルの燃料注入を始めるなどの準備行為に入れば、武力攻撃の着手と捉えられると説明。その場合に敵基地攻撃が可能とした。

 だが実際にはどの時点で着手と見なすか判断が困難だ。日本が武力攻撃着手と見なして攻撃したとしても、先制攻撃と受け止められる可能性がある。

 過去にも「自衛」を理由として始められた戦争が多かったことを銘記すべきだ。敵基地攻撃能力を保有することで近隣国との緊張が一層高まる恐れもある。そんな道に踏み込んではならない。

 北朝鮮の非核化に向けた米朝交渉は頓挫している。米中関係の悪化も進む。日本に求められるのは関係改善に向けた外交努力ではないか。平和を守るには平和的な手段がふさわしい。75回目の終戦の日に、日本の進むべき道を再確認したい。

終戦から75年。記者が戦争の足跡を追いました

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