北斗星(8月15日付)

お気に入りに登録

 かつて通った小学校の敷地に舞台のような石組みがあり、担任がそこで怪談を語ってくれたことがあった。それが「奉安殿(ほうあんでん)」の台座と聞いたのは大人になってからだ

▼奉安殿は天皇、皇后の写真(御真影)と教育勅語を納めた戦前の施設。戦後ほとんどが取り壊されたが、今年刊行の「秋田県の戦争遺跡」(秋田文化出版)によると県内で確認された現存する奉安殿は6カ所。神社や寺院に移築され宝物庫や戦没者慰霊堂などに再利用されているという

▼奉安殿の前で最敬礼した経験のある世代はいま80代以上。その世代から戦争体験を聞くのは年々難しくなっている。その分、戦争に関わる遺跡や遺物の保存、記録はますます大切になる

▼75年前の14日深夜から15日未明の爆撃で250人以上が犠牲となった土崎空襲は、太平洋戦争最後の空襲の一つ。地域には爆撃で頭部が失われた「首なし地蔵」の残る寺がある。犠牲者の慰霊碑は数多く、平成になって建てられた碑も少なくない

▼土崎みなと歴史伝承館では爆撃された旧日本石油秋田製油所の「被爆倉庫」の一部を常設展示している。当時の写真、犠牲者の遺品など約100点を集めた土崎空襲展を30日まで開催中だ

▼先日訪れた展示室では就学前の幼い娘に展示品の絵本を熱心に読み聞かせる母親を見掛けた。戦争の歴史を直視するのは時につらいことだが、世代を超えて語り継いでいかなくてはならない。その営みこそが、この国の戦争のない未来につながる。

秋田の最新ニュース