社説:香港統制本格化 国際社会は圧力強めよ

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 中国・香港政府が国家安全維持法(国安法)による統制を本格化させた。社会主義の中国に資本主義を併存させ、集会や言論の自由などを約束する香港の「一国二制度」が根底から揺らいでいる。

 香港警察は今月上旬、国安法違反容疑で民主派の著名人2人を逮捕。後に保釈したものの、捜査を継続、共に中国本土に移送される可能性も出てきた。

 2人は中国に批判的な香港紙「蘋果日報」の創始者、黎智英氏と、大規模な民主化要求デモを率いて「民主の女神」と呼ばれた活動家の周庭氏。外国勢力と結託し、国家の安全に危害を加えたというのが容疑だ。

 警察は特に影響力が大きい人物を狙い撃ちしたとみられる。「中央政府(中国)には逆らえない」との恐怖感を市民に植え付け、民主化運動や中国批判を封じ込めるのが狙いのようだ。

 根拠となった国安法は中国が5月に導入を決定。香港で6月末施行された。国家分裂罪や国家安全に危害を加える罪などを定め、終身刑を最高刑とする。

 施行翌日は「香港独立」の旗を持つなどした10人が逮捕された。それからわずか1カ月余で民主派の代表的人物が逮捕されたことは、習近平指導部の強硬姿勢を浮き彫りにするものだ。

 香港で唯一の民主派寄りの新聞である同紙は報道の自由の「牙城」。警察は約200人態勢で同社ビルを家宅捜索、黎氏の長男や次男、同紙を傘下に置くメディアグループの幹部までも逮捕した。言論の自由に対する弾圧であり、決して許されない行為だ。

 逮捕翌日には新聞スタンドに行列ができ、同紙は通常の約8倍の約55万部を発行。メディアグループの株価も大幅上昇した。こうした支援の動きを見れば、民主派の黎氏ら側に民意があるのは明らかだろう。

 1997年の香港返還の際、一国二制度を「50年間は変更しない」と中国は国際社会に公約。立法権や司法権など「高度の自治」を香港に保障した。

 中国は公約に立ち返り、民意を尊重して制度を維持しなければならない。香港の中国化に反対し、自由と民主主義を求める世論は根強い。強権支配で香港の長期的な安定化を図るのは難しいのではないか。

 9月実施予定の立法会(議会)選挙を香港政府は1年延期。新型コロナウイルス感染拡大を理由にしているが、過半数を目指す民主派の伸張を阻止したい中国、国安法への反発で厳しい選挙を回避したい親中派の意向が背景にあった可能性もある。

 米英など5カ国は共同声明で「香港の安定と繁栄の根幹である民主的手続きを損なう」と批判。茂木敏充外相も重大な懸念を表明した。選挙にまで中国の影響が及ぶことになれば、香港の民主主義は窒息しかねない。国際社会は圧力を強め、自由で公正な選挙の実施へ粘り強く働き掛け続ける必要がある。

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