社説:最低賃金引き上げ 地域格差縮小へ不可欠

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 本県の最低賃金が現行の1時間790円から、792円に引き上げられることになった。秋田地方最低賃金審議会が引き上げを秋田労働局に答申、労働局は9月1日に答申通りの改定額を官報で公示し、10月から発効させる方針だ。

 引き上げ額2円は2012年以来8年ぶりの1桁台となる。新型コロナウイルスの感染拡大で経済情勢が悪化し、苦境に立たされている企業側の事情を最大限考慮した結果と言えそうだ。例年並みの2桁台を期待していた労働者に物足りなさは残るが、現状ではやむを得ないだろう。

 ただし引き上げは低賃金で働く人々の労働条件を改善し、賃金の地域間格差を縮小するためにも不可欠だ。対応が必要な企業は趣旨を十分に踏まえて実現しなければならない。

 審議会は、中央最低賃金審議会が具体的な引き上げ目安を示さない中での異例の協議となった。労働局によると、労働者側の委員が生活改善などのために一定の引き上げを主張したのに対し、使用者側は厳しい経営状況を理由に据え置きを求めた。最終的には「経済情勢を考慮する必要がある」「県外への人材流出を防ぐため少しでも引き上げることが重要」などと双方が歩み寄ったという。

 苦しい環境の中、労使双方がお互いの主張に一定の理解を示し全会一致で決定した結論であり、答申を重く受け止めたい。一方で引き上げに負担を感じる企業もあるだろう。しかし最低賃金は法律で定められたものであり、企業側が引き上げを実現するのは義務だ。コロナ禍という厳しい状況だからこそ、労働局はさまざまな機会を捉えて引き上げの必要性を企業側に説明しなければならない。

 国や自治体がしっかりと連携を取り、引き続き企業支援に力を入れることも重要だ。コロナ禍で倒産や解雇が相次ぐ状況では、賃金を引き上げる以前に雇用そのものが失われる可能性もある。持続化給付金の支給や制度融資の紹介などにより、経営を支えていくことが必要だ。

 改定後の本県の最低賃金は鳥取、高知、大分など6県と並び、前年に続いて全国最下位となる見通しだ。東北では本県と同額で最下位だった青森、岩手、山形の答申額は今回、本県を1円上回る793円となった。本県は東北で単独最下位となり、低水準ぶりが一層際立つことになったのは残念と言わざるを得ない。

 全国で額が最も高い東京都は今回、現行の1013円に据え置く答申だったものの、本県との開きは221円と依然として大きい。働き手の県外流出を防ぐためには一層の格差縮小が欠かせない。企業が苦しい経営を余儀なくされている中、国は地方の実情をきめ細かく把握、経済支援策の拡充などを通じて、賃上げしやすい環境の整備に全力を挙げて取り組むべきだ。

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