社説:鹿角、クマ食害続発 里に近づけぬ自衛策を

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 8月に入り、鹿角市でクマによるとみられる農作物の食害が続発している。今年は同市で人身被害は出ていないものの、畑や果樹園などへの出没は人身被害と紙一重。今後は収穫が本格化する果樹の被害が懸念される。電気柵を設置するなど作物の管理を徹底し、クマを呼び寄せないことが重要だ。

 市農林課のまとめでは、8月の食害は18日現在で48件に上る。既に昨年同月の25件を上回り、2018年や17年同月の50件前後に迫る数だ。トウモロコシやスイカを中心に、モモやリンゴなどの果樹にも被害が及んでいる。牛の飼料が狙われたほか、山間部の牛舎で子牛が食われる被害も2件相次いだ。

 県自然保護課によると、8月は広葉樹の実などが実る前で山に食物が少ないため、農作物被害が多発する傾向にある。同課は「山で探さなくても、おいしい物が簡単に食べられると学習している可能性がある」と懸念する。

 市が公表する食害件数は、市民からの通報に基づく数字。増加の要因として農林課は「市民が恐怖を感じ、通報した方がいいと思うケースが増えているのではないか」と分析。県と同様「クマが人里の作物を当てにしているとすれば危険な傾向だ」と指摘する。

 収穫前の農作物や家畜の飼料以外に、廃棄した作物や肥料、堆肥、実のなる木などもクマを人里に呼び寄せる原因となる。廃棄や保管には細心の注意が必要だ。クマが身を隠せないように畑や果樹園の周辺の草刈りを徹底することも重要だ。

 クマは基本的に臆病で人間を避ける習性があり、人身被害の大半は偶発的に遭遇したことによるもの。農作業の際にはラジオなど音の出るものを携行し自らの存在を知らせ、複数で行動するなどして被害を防ぎたい。

 同市尾去沢の山あいに位置する三ツ矢沢自治会は今年、県や市の助成を受け、道路脇や水田の山裾側の草刈りを行ったほか、耕作放棄地の雑草や樹木の刈り払いを実施した。見通しを良くしてクマの接近を防ぐとともに、畑にも電気柵を巡らすなどして食害防止に努めている。

 昨年は約15件あった目撃が、今年は3分の1程度にまで減少。山中にクマの痕跡はあるものの、民家近くへの出没は抑制できているという。

 県内のクマの推定生息頭数は今年4月時点で4400頭で、5年前の約4倍に上る。山中での食物を巡る競争が激しくなり、餌を求めて人里に下りて来るリスクが高まっている。被害を防ぐには、人間の側の自衛策が欠かせない。

 効果を発揮しつつある同自治会の取り組みに学び、人里にクマを近づかせないことが大切だ。仮に1カ所でも食害を放置すれば、危険は集落全体に及びかねない。住民が一致協力し、自らの地域を守る意識を高めたい。

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