北斗星(8月24日付)

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 「三月二十九日 天気は良い。朝六時ころ私等(ら)は渋谷に籠(かご)の乗物で出かける」。訪問先では朝から酒などをごちそうになったというから、楽しい江戸見物だったことだろう。貞享4(1687)年、今の暦では5月のことだ

▼当時、「所預(ところあずかり)」2代目として角館一帯を治めた佐竹義明の日記。義明は天皇の代替わりに合わせて献上品を届けるため、江戸経由で京都へ往復4カ月の旅をした。行きと帰りの道中は大雨による洪水に悩まされ、宿泊地などの予定変更を余儀なくされた

▼冒頭の記述は、1カ月近くにわたってお供の者数人と江戸見物を楽しんだくだりの一つ。江戸滞在中は気候に恵まれた。天皇即位の日程を、後に忠臣蔵で有名になった吉良上野介から内々に聞いたとの記述もあり、興味深い

▼義明ら「佐竹北家」歴代の当主たちは、江戸時代初期から約220年間にわたって日記を書き継いだ。全765冊は県有形文化財に指定されている。その一部が現代語訳され、自費出版された

▼手掛けたのは仙北市角館町文化財保護協会の副会長佐藤正美さん(71)。「角館のお祭り」の山車(やま)の人形を作る人形師でもあり、角館の歴史や文化に造詣が深い。「日記は角館の宝物。誰でも読めるようにして興味を持ってもらおう」と思い立った

▼義明の記述は淡々としているが、300年以上昔の旅の苦労や楽しみが行間から想像できる。教科書で学ぶ歴史とは違った魅力がある。他の歴代当主の日記も読んでみたくなった。

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