社説:安倍首相辞意 政治的空白は許されぬ

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 健康不安説が取り沙汰されていた安倍晋三首相が辞任の意向を表明した。持病の潰瘍性大腸炎の悪化が判明、職務を継続することはできないと判断した。

 約7年8カ月の「安倍政治」は「1強」「官邸主導」などと称された。今月24日には安倍首相の連続在職日数が歴代最長となったばかりだった。

 安倍政治とは一体、何だったのか。それは圧倒的な多数議席を背景にした「数の力」の政治ではなかったか。特定秘密保護法や集団的自衛権の行使容認、安全保障法制、「共謀罪」法などはこの力の結果だったと言わざるを得ない。

 森友学園問題や桜を見る会などでは公文書のずさんな扱いが次々と判明。記録をきちんと残して後の検証に委ねるという姿勢の希薄さが浮き彫りになった。国会では「丁寧な説明」を繰り返すものの、誠実で納得できる答弁とは言い難かった。

 その一方で安倍首相が掲げるアベノミクスの下、株価や経済指標が好転したことは評価しなければならない。トランプ米大統領と良好な関係を築くなど、外交面で存在感を発揮したことも確かだ。首相の辞意を受け、米紙電子版は「東日本大震災からの復興と経済再生に尽力した」と評価した。

 新型コロナウイルス対策で安倍首相は4月、全国に緊急事態宣言を出して感染対策への強い姿勢を示した。その一方では、減収世帯への30万円給付を全国民への一律10万円給付に急転換するなど判断が揺れ動いた。

 その後は感染拡大が続く中でも宣言再発令を否定。自治体は独自の宣言を出したり、基準を作ったりすることを余儀なくされた。観光支援事業「Go To トラベル」も不安の声が上がる中、東京発着の旅行を除外して実施。政府と自治体との溝は深まるばかりだ。

 今後はインフルエンザとの同時流行も懸念される。通常の医療を維持しながら、感染者や重症者の急増に対応できる医療体制の整備を急がなければならない。自治体が休業要請した場合、協力金の財源をどうするかといった問題も避けては通れない。いずれも、政府と自治体が連携を密にしなければ対応の難しい問題だ。

 新型コロナ対策と並行して、4~6月期の国内総生産が年率換算で戦後最悪となった経済の立て直しを進めることも急務だ。二つのバランスを取ることがいかに難しいかは、各国が苦慮している現状を見れば明らかだろう。感染症の専門家や自治体の声をしっかりとくみ上げて対策を再構築しながら、企業支援や雇用維持などにも政府は全力を注がなければならない。

 安倍首相の辞意表明を受け、自民党内の後継選びに時間がかかり過ぎて政治に空白が生じるようなことがあってはならない。そのような事態は、国民に不利益をもたらしかねないことを自民党は肝に銘ずるべきだ。

秋田魁新報電子号外

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