社説:横手の計画、国認定 観光振興、「まんが」核に

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 「横手市増田まんが美術館」を中核として国内外から誘客を図る計画が、文化観光推進法に基づく国の認定を受けた。漫画文化の魅力を広く発信するだけでなく、「増田の蔵」など地域の観光資源との連携をこれまで以上に進めてほしい。

 文化観光推進法は5月1日に施行。博物館や美術館といった施設を拠点にした文化の振興を観光振興や地域活性化につなげ、その経済効果を文化振興に還元するのが目的。横手市の計画をはじめ、全国の計10件が今月認定された。

 全国には魅力的な文化資源があっても情報発信や交通手段が不十分なため、誘客に結び付かない地域が少なくない。そんな地域への誘客を図るためにも、事業費の一部を国が補助する。このチャンスを生かしたい。

 市の計画で拠点施設となるのはまんが美術館だ。市と市増田まんが美術財団、市観光推進機構の3者でつくる協議会が、本年度から5年計画で事業に取り組む。観光客に市内を周遊してもらうため、地域の魅力を多言語で伝えるボランティアガイドの育成や、ツアー開発などを進める。

 まんが美術館は昨年5月に大規模リニューアルオープン。多彩な企画もあって、今年3月までに目標の12万人を上回る14万3千人が訪れた。膨大な数の漫画原画を収蔵しているのが特徴で、6月には人気漫画家さいとう・たかをさんと浦沢直樹さんの原画計15万点の受け入れが決まった。2人の原画も合わせれば、収蔵する原画総数は40万点超に上る。国内外で他に類を見ない規模である。

 原画は漫画家が精魂傾けて描いた作品である。印刷物からは知ることができない制作過程をうかがうことができ、肉筆ならではの迫力がある。海外では美術品として鑑賞するファンも多く、インバウンド(訪日外国人客)誘客の目玉になり得る。

 美術館のスペースには限りがある。展示する原画を定期的に入れ替え、魅力的な企画展を開催するなどして、リピーター獲得に努めなければならない。

 漫画ファン以外を取り込むことも必要だ。美術館近くには豪華な内蔵で知られる歴史的な町並みがある。国の重要伝統的建造物群保存地区に指定され、観光地として人気が高い。だが美術館と町並みの両方を訪れる観光客はまだ少ない。

 内蔵に原画を展示してはどうかとの声も上がっている。内蔵を備えた家屋の多くは住民の居住空間でもある。所有者の理解や協力、原画の安全な展示法など課題は少なくない。だが美術館と町並みの周遊を定着させ、さらに観光客の流れを市内の他地域へ波及させたい。

 新型コロナウイルス感染症の収束が見通せない中、事業には困難が伴うことも予想される。コロナ後を見据え、まんが美術館を中核にした観光振興の取り組みを着実に進めてほしい。

まんが美術館の現状と展望に迫りました

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