北斗星(8月30日付)

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 「奇妙な果実」という歌を久しぶりに聴いた。米国の黒人女性歌手、ビリー・ホリデイが約80年前初めて歌った。時には頬を涙でぬらし、以後、約20年歌い続けた。44歳で短い生涯を閉じたホリデイの代表的な歌だ

▼初めて歌われた頃も南部を中心に黒人への私刑(リンチ)があったらしい。手を下すのは白人だ。南部の木々とそよ風、犠牲になった黒人。苦痛に満ちた歌詞と絞り出すような声が聴く者の胸を刺す

▼この重い歌を紹介したのは黒人への発砲や暴行が米国で相次いでいるからだ。つい最近、黒人男性が背後から警官に7回撃たれて重体となった。5月には黒人男性が白人警官に膝で首を9分近くも押さえ付けられ、死亡した

▼こうした行為は黒人へのリンチと何ら変わらないのではないか。「相次ぐ警官による黒人の虐殺を見ることは正直、吐き気がする」。テニスの大坂なおみ選手は試合を一時、棄権して抗議を表明。ツイッター上で激しい怒りをぶつけた

▼黒人差別の歴史をひもとくと、その根深さに米国の暗部をのぞく思いがする。この暗部と闘い、凶弾に倒れたのが黒人指導者の故キング牧師だ。「私には夢がある」と繰り返す演説で知られる

▼「私の4人の幼い子供たちがいつの日か、肌の色ではなく人格そのものによって評価される国に住むという夢です」。演説は57年前の8月28日に行われた。肌の色で人の評価が左右されない国の実現が、いつまでも「夢」のままであっていいはずがない。

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