社説:自民党総裁選 候補者の政見を明確に

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 自民党は総裁選日程を14日投開票とする方針で、党員・党友投票を見送ることを総務会で決めた。安倍晋三首相の突然の退陣表明が党則の「緊急を要するとき」に当たるとの党執行部の判断だ。しかし、少しでも多くの民意をくみ取るため、原則通りに実施するという判断はできなかったものだろうか。

 通常は党大会を開き、国会議員394票と党員・党友394票の合計788票で総裁を選出する。それが今回は両院議員総会で国会議員394票と47都道府県連に3票ずつの141票の計535票で選出される。

 党員・党友投票の見送りは政治空白を最小限に抑えるためという理由だ。しかし、与党第1党の総裁選びは首相を選ぶことと同じだ。それを思えば、候補者が政策論争を交わし、党員・党友の意思を反映させることをもっと大事にすべきであろう。

 小林史明・党青年局長ら有志議員は先月31日、二階俊博幹事長に党員・党友投票を実施するよう申し入れている。下村博文選対委員長を含む国会議員140人超の署名を添えた。この人数が党所属国会議員の3分の1を上回ることを考えれば決して軽視できるものではない。

 この申し入れには地方議員ら約400人も賛同。このほか、岩手県連、大阪府連などの地方組織も同趣旨の要求を出している。多くの国民の理解を得るため、全ての党員に開かれた選出手続きが不可欠だという声が根強い表れといえよう。

 総裁選は岸田文雄政調会長、石破茂元幹事長が昨日、立候補を正式表明。菅義偉官房長官はきょう2日に表明する見通し。細田派、麻生派、二階派などの支持を受ける菅氏が優位に立つとみられている。

 各派閥の支持が固まらない段階から、党員・党友投票の見送りの方向が早々に打ち出されていた。それが各派閥の動向に影響を及ぼした可能性もある。

 議員の支持と世論調査の支持が大きく異なることは珍しくない。また過去の総裁選には議員票で不利とされた候補が、党員・党友投票で善戦して予想外の健闘をしたケースもあった。議員以外の広い支持がどの候補にあるのかを知るのも大切だ。

 今回の方式の総裁選では議員票の比重がより増すことになる。しかし、それは議員個々の判断というより、各派閥の意向が色濃く反映される。その派閥の意思決定過程にはどうしても不透明感が伴う。新しい総裁を選ぶ過程に不透明さが付きまとうようでは、政治に対する信頼を得られない。

 今回の総裁選の候補者には直面する新型コロナウイルス感染症対策、経済立て直しなどへの姿勢が問われている。一方で安倍政権が生んだ政治不信の回復を望む声が大きいことも忘れてはならない。短期決戦となるが、公開討論の場を設けるなど各候補者の掲げる政見を明確に伝えることが求められる。

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