社説:IR汚職事件 カジノ推進、見直すべき

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 カジノを含む統合型リゾート施設(IR)事業をこのまま進めていいのか。事業に絡み同じ現職国会議員が3度も逮捕されている。新型コロナウイルスの影響で政府や自治体の手続きは停滞。国民の反対の声は根強く、ギャンブル依存症が増えるとの懸念も拭えない。

 こうした現状を見れば、事業推進に疑問を抱かざるを得ない。事業は安倍政権の「成長戦略の目玉」との位置付けだが、政府は国民の声を広く聴きながら、凍結も視野に入れて根本から見直すべきではないのか。

 3度逮捕されたのは衆院議員の秋元司容疑者=自民離党。IR事業を所管する内閣府副大臣だった2017~18年、中国企業側から計約760万円相当の賄賂を受け取った収賄容疑で2度逮捕された。一貫して無罪を主張、2月に保釈され議員活動を再開していた。そのさなか、今度は贈賄側に裁判での偽証を依頼、報酬の提供を持ち掛けた疑いで再逮捕されたのだ。

 保釈中の現職国会議員の逮捕は前代未聞だ。公判で贈賄側の2人は偽証を持ち掛けられたことを認めている。秋元議員は身の潔白を訴える裏側で、不正を働いていた疑いが濃厚ということであり、これ以上、議員としてとどまるべきではない。

 一連の事件で明らかになったのは、外国企業が政界工作をしていたという疑いだ。政府は20年代半ばのIR開業を目指しているが、事業は開業前からカネにまみれていたのではないかとの疑念を抱かせる。

 事業そのものに目を転じれば新型コロナの影響もあって先行きは不透明だ。誘致に名乗りを上げた横浜市、大阪府・市、和歌山県、長崎県ではいずれも事業者選定などの手続きが遅れている。大阪のIR有力候補とされる米カジノ大手は経営が悪化。横浜参入に意欲を示していた別の米大手は撤退した。

 政府は候補地から最大3カ所の整備地域を選ぶ方針だ。しかし汚職事件を受け、自治体などの申請受付期間を盛り込んだ基本方針の決定を先延ばしした。その後もコロナ感染拡大で手続きは事実上、停止している。「成長戦略の目玉」事業とは言えない状況だ。

 カジノ開設でギャンブル依存症が増える恐れはないのか。国の調査では過去に依存症になった疑いがある人は全国で推計約320万人。都道府県は依存症対策の策定を求められるとはいえ、カジノ入場客への賭け金貸し付けが認められていることを考えれば実効性のある根本的な対策は困難ではないか。専門家からは「やめられたはずの人が際限なくギャンブルを続けてしまう」などと批判が出ている。

 世論調査では、汚職事件を受けて事業を「見直すべきだ」との回答が7割を超えた。ギャンブル依存症の増大に対する深刻な懸念や国民の反対の声を、政府は真摯(しんし)に受け止めなければならない。