社説:国内供給網の強化 県内企業は積極参加を

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 製品や部品のサプライチェーン(調達・供給網)の国内強化が迫られている。新型コロナウイルスの感染拡大で、中国に依存している医療関連製品や自動車部品の供給が一時滞り、医療体制や自動車の生産に深刻な影響が出たからだ。こうしたことが二度と起こらないよう、官民を挙げて調達先の分散化を進める必要がある。

 その一環として政府は2200億円の予算を確保、国内生産拠点整備のための工場新設や設備導入を対象とする補助事業を立ち上げた。第1弾の公募で57件の事業、約574億円分を採択した。このうち医療関連の5件が本県を実施場所とする。

 5件は▽新型コロナウイルス検査キット▽PCR検査試薬▽遺伝子解析装置の部品▽人工呼吸器用部材▽医療用フェースシールド―をそれぞれ生産する計画だ。県内外の10社が参加、工場を新設したり、パーツを供給したりしてサプライチェーンを強化する。新型コロナ対策はもちろん、雇用機会の拡大など地域への波及効果が期待される。

 例えばフェースシールドは、プラスチック加工・川瀬製作所(埼玉県新座市)の北秋田市工場で新商品として開発、生産する。当面は月産6千個を目指し、緊急時には2万6千個まで引き上げられる体制を整えるのが目標だ。フル稼働すれば秋田、青森、岩手3県の医療従事者全員に、2カ月ごとに1個が行き渡る量を確保できるという。併せて医療施設に自社で配送できる体制も整備する方針で、実現すれば地域にとっても心強い。

 他の9社の中には国内供給だけでなく、輸出を視野に入れている事業もある。これを機に製造請負型から研究開発型への脱皮を図り、企業価値を高めようと意気込んでいる企業もあり、今後の展開が注目される。

 ただし、忘れてならないのは、感染拡大で明らかになったサプライチェーンの弱体化は企業がコスト削減を追い求めた結果だということだ。新たな生産拠点を設けても、十分な体制を維持できなければ意味がない。

 国内は人件費など生産コストが高いため、企業努力だけでサプライチェーンを維持するのは難しいだろう。政府や地元自治体が一定量を買い取って備蓄するといった仕組みづくりも、検討すべきなのではないか。そのためには国民と地域住民の理解を得ることが不可欠だ。

 経済産業省の2020年版通商白書はサプライチェーンを巡る問題に多くの紙幅を割いており、政府の危機感がうかがえる。財務省は21年度予算編成で新型コロナ対策の概算要求に上限を設けない方針だ。

 サプライチェーンを強化するため、政府がさらなる企業支援策を講じる可能性は高いとみられる。県内に本社や事業所を構える企業にはぜひ挑戦してもらいたい。県や市町村も企業誘致の好機と捉え、積極的に取り組むべきだ。

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