北斗星(9月7日付)

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 「美しい国へ」という題の本がある。「おっ、あれか」と思い出す人もいるのではないだろうか。約7年8カ月に及ぶ長期政権を率いる安倍晋三首相の著書だ

▼2次政権発足の翌年「新しい国へ」と改題された完全版が手元にある。読んでいくと孟子の言葉「自ら反(かえり)みて縮(なお)くんば千万人といえども吾(われ)ゆかん」が目に留まる。省みてやましいところがなければ千万人の反対があっても自分の道を進もう、という意味だ。「闘う政治家」という言葉も登場。ともに首相の目指す強い政治家像だ

▼同じく「吾ゆかん」と推進したのが、地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」計画だったのか。ミサイル推進装置ブースターの安全な場所への落下が難しいとして秋田、山口への配備計画を最終的に断念。その検証結果が発表された

▼驚いたのは16ページしかないことだ。参考資料が7ページ、検証は9ページのみ。システムに関する知見が不十分にもかかわらず、ブースターは海に落下すると安全性を強調。米国から導入を決めたが安全性検証に限界があった―。そんな経緯がうかがえる

▼陸上自衛隊新屋演習場を「適地」とした昨年の調査報告書は101ページ。最終ページで「いかなる事態においても住民の皆様を守り抜きます」と宣言する一方、安全性について十分な根拠はなかったのだからあきれる

▼トップダウンでレールが敷かれると問題があっても突っ走る。イージスが浮き彫りにしたのは官僚組織の持つ怖さではなかったか。

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