北斗星(9月8日付)

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 「ユニクロ」を率いる柳井正氏は1号店開店の翌1985年、香港でアパレルチェーン「ジョルダーノ」のポロシャツを目にし「これだ」と思った。企画から製造、小売りまでを自社で行う、当時としては画期的なビジネスモデルを構築し、低価格・高品質を両立させていた

▼創業者はジミー・ライ氏。柳井氏は自著「一勝九敗」(新潮文庫)の中で、同年代のライ氏に会った時の印象を「パッと見は大したことないオッサンが大したことをやっているな、という感じだった」と記す

▼「オッサン」の中国語名は「黎智英(れいちえい)」。中国広東省出身の71歳。12歳で単身香港に密航し、工場労働者などを経て服飾事業で財を成す。先月、香港国家安全維持法(国安法)違反の疑いで逮捕された、その人である

▼黎氏は90年にメディア界に転身。香港返還2年前の95年に日刊紙「蘋果(ひんか)日報」を創刊し、中国共産党批判の論陣を張ってきた。国際社会に発信力を持ち、民主化運動の支援も続けてきた

▼黎氏の逮捕容疑は「外国勢力との結託により、国家の安全に危害を加えた罪」を犯した疑い。国安法違反の最高刑は無期懲役。今は保釈中だが、中国本土に送られて裁判を受ける可能性もあるという

▼黎氏のようにビジネス界に革新をもたらす人は、自由で開かれた社会にこそ現れてくるのではないか。世界展開するユニクロに影響を与えたことは香港にそうした土壌があった証しだろう。香港社会に萎縮と諦めが広がらないか心配だ。

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