社説:自民総裁選告示 政権構想、国民に明示を

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 安倍晋三首相の後継を決める自民党総裁選が告示された。立候補したのは届け順に石破茂元幹事長(63)、菅義偉官房長官(71)、岸田文雄政調会長(63)の3人。投開票が行われる14日の両院議員総会に向け政策、政権運営を巡って論戦が始まった。

 事実上、新首相を決める選挙。最大の争点は新型コロナウイルスへの対応だ。新型コロナをどう収束させるのか。具体的かつ実効性の高い施策が求められる。一方で経済が大幅に後退する懸念が高まっている。感染防止と経済回復の両立をどう図るかが問われている。

 安倍政権の路線を継承するのか、それとも軌道修正するのかも重要な論点だ。大企業や富裕層を除くと、アベノミクスによる景気拡大の恩恵は広がっていないとされる。雇用は増加したが非正規の比率が高く、格差拡大が進んだとも指摘される。外交・安保問題も含め、安倍政権の総括は避けて通れない。

 石破氏は「成長を実現する構造改革は道半ば」と指摘。東京一極集中の是正に関し「東京は集積の限界点を超えた。負荷を減らせば東京や地方の利益になる」などと述べ、担当相設置を掲げる。

 岸田氏は格差是正策に優先的に取り組む方針。具体的には、中間所得層への教育費支援や最低賃金引き上げなどを挙げる。省庁の縦割りを排し、ビッグデータ活用を推進する「データ庁」の創設などを提唱している。

 これに対し菅氏はアベノミクスをはじめ安倍政権の継承を強調し、「さらなる前進」を図ると訴える。本県の農家の長男という生い立ちから、地方の活力を生み出したい意向も前面に押し出している。

 菅氏が5派閥および無派閥議員の支持を取り付けて優勢だ。地方票も着実な獲得を目指している。新総裁の任期は安倍首相の残り任期で、来年9月には再度、総裁選が行われる。衆院議員の任期の来年10月までには衆院選も実施される。菅氏は新首相に就任した場合、暫定政権ではなく本格的な内閣をつくる意欲を示した。1年限りの「つなぎ」の政権にはしないとの意思表示だろう。

 安倍首相の退陣表明直後の世論調査で自民党の政党支持率、内閣支持率はともに回復した。このため、新政権発足直後の衆院解散、総選挙を期待する声が党内にある。そうした可能性を考えればなおさら、3氏の論戦を通じ、新政権がどんな考えの下に政策を実行していくか、全国民に示す大きな責任が自民にはあると言える。

 しかし、菅氏を支持する5派閥間では、大臣ポストや党内人事を巡る思惑も絡んで主導権争いが始まっている。そんな内向きの動きを見せつけられては、国民の新政権に対する期待や信頼感は損なわれかねない。3氏は派閥の論理にとらわれない国民第一の政権の姿を明示するべきだ。

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