社説:自民総裁に菅氏 異論認め自由な議論を

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 自民党の新たな総裁に本県出身の官房長官、菅義偉氏が選出された。5派閥の支持を得た上、地方票も伸ばして圧勝した。選出を受けて安倍路線の「継承と前進」を改めて表明、「私自身の全てを傾注し日本のため、国民のために働く」と述べた。

 菅氏の決意に期待するとともに、総裁選で何が問われたかを改めて振り返らなければならない。問われたのは安倍政権の何を継承し、何を改めるかではなかったか。新型コロナウイルス対策やアベノミクス、森友・加計学園問題、外交などを巡っては菅氏、石破茂元幹事長、岸田文雄政調会長のそれぞれの考えの違いが浮き彫りになった。

 8年近くに及ぶ「安倍1強」の下、党内では以前ほど活発な議論が行われなくなったように見える。総裁としての菅氏に求めたいのは石破、岸田両氏のような異なる意見を排除することなく、党内の議論を活性化させることだ。

 自由闊達(かったつ)に多様な意見を戦わせることは党の活力を生み、広く国民の声を反映させることにもつながるはずだ。それをしっかりと認識して党運営に当たってほしい。

 今後の焦点は党役員人事と組閣に移る。注目されるのは、5派閥の力で総裁に押し上げられた無派閥の菅氏が、これらの派閥をはじめとする各グループをどう処遇するかだ。

 菅氏は「脱派閥」が持論だ。かつて「派閥が復活し始めたら党の信頼感は一気になくなる」と主張していた。それが総裁選告示日の会見では、人事の在り方について「適材適所」などと述べて派閥批判を封印した。

 人事に当たっては個々の能力と経験をきちんと把握し、適切な人材を用いることが何よりも大切だ。自分を支持した派閥の推薦だからといって、その人の能力を問わずに受け入れるのでは言行不一致との批判を免れない。

 最近の菅氏について気になるのは、消費税率を巡る発言を翌日に修正するなど不用意な言葉が目立つことだ。それだけではない。中央省庁の幹部人事を握る内閣人事局に関連し、政権が決めた政策の方向性に反対する幹部には「異動してもらう」と強い姿勢をあらわにした。

 政権が政策を実現しようとするのは当然だ。そのためには法律や制度に精通した官僚の協力が欠かせない。専門的な立場から問題点や課題を指摘することもあるに違いない。だが、それさえも「反対」と受け止めて異動させるようなことがあれば、官僚は本来なすべき仕事をしなくなる恐れがある。

 安倍政権の官邸主導を後押ししたと指摘される内閣人事局の存在が、官僚の忖度(そんたく)を生んだのではなかったか。安倍政権の「負の遺産」までも継承することは避けるべきだ。政治主導も行き過ぎれば、国民にとってかえって不利益になることを忘れてはならない。

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