社説:読書条例10年 本に親しむ場、増やそう

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 新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、多くの人が外出を控えるなど不自由な暮らしを余儀なくされた。そんな「巣ごもり生活」の中でさまざまな本を読んで考えを深め、読書の価値や魅力を再認識したという人もいるだろう。

 本県は、都道府県で初めて読書推進条例が制定された。2010年4月の施行から今年で10年の節目を迎えた。県はこの間、市町村と連携して図書館や公民館などを会場に、読書に親しんでもらうための啓発イベントを盛んに展開してきた。さらに取り組みを強化し、より多くの県民が本に触れ、読書を通じて心豊かな生活を送れるようにしてほしい。

 県がこれまで力を入れて進めてきた取り組みに「読書活動推進パートナー支援事業」がある。希望する市町村に15万円を補助し、地元の企業や団体が所有する施設などに図書コーナーを設置してもらう。17年度から3年間実施した結果、23市町村が活用した。

 藤里町はその一つだ。初年度に補助を受け、町内のスーパーマーケットとコミュニティー施設の2カ所に図書コーナーを設置した。地元の地域おこし協力隊が町の委託を受けて運営している。

 町には書店がなく、かねて住民が本に親しめる場が求められていた。2カ所の図書コーナーはいずれも町の中心部にあり、買い物客らがバスの待ち時間などに気軽に立ち寄ってくつろいでいる。本を通じて住民同士が交流を深める場にもなっており、今後とも大切にしたい。

 小坂町も町内に書店がなく、この事業を活用するなどして診療所や多世代交流施設など8カ所に図書コーナーを順次設置した。職員が住民のニーズを踏まえて図書の入れ替えを行い、住民に喜ばれている。本を楽しみにしている人たちのため、引き続き住民目線のきめ細かなサービスに努めるよう望む。

 人口減少が進む中、インターネットショッピングの普及などに伴い、全国的に書店が減っている。本県でも閉店が相次いでおり、県書店商業組合によると、00年に81あった組合加盟店は3割の25にまで減った。県内で書店のない町村は藤里、小坂を含めて九つを数える。そうした地域にとって、図書コーナーのように多様な本に出合える場は特に重要だ。必要に応じ、さらに増やしてもらいたい。

 読書推進条例施行当時の県民意識調査で、本や雑誌、新聞などを1日30分以上読む人の割合は60%だった。だがここ数年は40%台に低迷しており、本年度も44%にとどまった。年代で見ると、働き盛りの20~30代が特に低くなっている。

 仕事が忙しくても、読書に親しむ時間を少しは持ちたいものだ。それが心のゆとり、生活の充実にもつながる。条例施行10年を機に、読書の意義をいま一度確かめ合いたい。

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