社説:トンブリ農家急減 新規参入進める対策を

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 大館市特産のトンブリを生産する農家の減少が止まらず、今年作付けしたのはわずか7戸にとどまることが、JAあきた北(同市)のまとめで分かった。「畑のキャビア」と呼ばれ本県を代表する農産品だが、農家の高齢化や後継者難で産地継承に危険信号がともる。新規参入の促進が急務であり、JA、農家、行政の3者がこれまで以上に連携して取り組む必要がある。

 トンブリはホウキグサの実を加工したもので、同市比内町が全国で唯一の生産地とされる。2017年には「大館とんぶり」として県内で初めて、農林水産省の地理的表示保護制度(GI)に登録された。

 農家は9、10月に収穫した実を乾燥させて保存し、注文を受けて加工、出荷する。加工所は現在、比内地域に3カ所あり、集落単位などで利用している。乾燥した実をゆでてからぬるま湯に漬け、皮をむいた後に洗いを繰り返すなど手間が掛かり、湯の温度管理や皮むきの方法などに独自のノウハウがある。

 JAによると、作付け農家数は年々減少しており、今年は5年前(13戸)の半分の7戸にまで落ち込んだ。その一方で、残った農家が生産規模を拡大していることから、過去5年ほどは栽培面積22ヘクタール前後、生産量60トン台で推移している。

 大館とんぶり生産組合によると、東京、大阪といった大都市の市場から増産要請があるにもかかわらず、供給が追い付いていないのが実情だ。個々の規模拡大には限界があるため、増産は難しい状況という。

 県外からの「外貨」を稼ぐ特産品の販売機会の損失であり、もったいないと言うほかない。オンリーワンの産地として関係する3者が一体となり、こうした増産要請への対応を含めて安定的な生産体制の構築を図るべきだ。生産者の高齢化が進む中、新規参入者の確保が何より重要になる。

 しかし加工の難しさなどがネックとなって、参入が進まなかったことが現状につながっている。このため関係者からは、農家が栽培に特化できるようにして、参入しやすくすべきだとの声が上がる。その際にはJAなどが主体となって老朽化が進む加工所を統合・新設し、専属の加工体制を設ける必要がある。新設には費用が少なからずかかることから、実現への道は見えていない。

 GI登録の際、名称を「比内とんぶり」とする案があったというが、「大館とんぶり」で決着した経緯がある。現在、生産者の畑は同市比内町独鈷地区に集約されているが、生産組合は市内での新規参入に協力する考えだ。栽培地を市内の他地区に拡大することも視野に入れ、新規参入を促すべきだろう。

 3者がそれぞれの役割と協力態勢を確認し、産地を絶やさないためにどのような対策を講じる必要があるのか、早急に方向性を示してもらいたい。

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