北斗星(9月20日付)

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 真夜中に目が覚めた。開けた窓から虫の声が聞こえる。寝入る前は子守歌のように穏やかだった気がする。それが今、ひんやりした夜気の中、にぎやかに鳴いている

▼声の主はエンマコオロギのようだ。鳴くのは雄で雌への求愛だという。口説き文句は「コロコロリー」、縄張りを主張したり遠くから誘ったりする際は「コロコロコロ」。夜が更けるほどコオロギの恋は激しくなるのだろうか

▼「秋も深まりつつあるなあ」。虫の声を聞くと、そんな感傷を覚える。なぜか。日本語で育った人は虫の声や雨風の音など自然界の音を“言語脳”の左脳で聞く。つまり「言葉」と同じく意味あるものとして処理する。その結果こうした情緒を感じる

▼西欧人など日本語以外で育った人はどうだろう。“音楽脳”の右脳で聞き「言葉」として処理しない。虫の声が聞こえなかったり、音は聞こえても虫の声と気付かなかったりするらしい。東京医科歯科大学名誉教授、角田忠信さんの実験に基づく学説だ。後に別の人の研究で裏付けられた

▼「ひふみん」こと、将棋の加藤一二三・九段にこんな伝説がある。対局中に滝を止めさせたというのだ。旅館にある人工滝の音が耳障りで集中できなかったからだという。「言葉」として聞いてしまうため、思考が妨げられ仕方がなかったのかもしれない

▼厳しい残暑も過ぎ去って日に日に秋らしくなってきた。コオロギの求愛、ひふみん伝説を思い浮かべながら虫の声を聞くのも面白い。

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