社説:「縄文」現地調査 遺産登録へ万全尽くせ

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 本県と北海道、青森、岩手の4道県が世界文化遺産登録を目指す「北海道・北東北の縄文遺跡群」に対する国際記念物遺跡会議(イコモス)の現地調査が終了した。世界に縄文文化の価値や魅力を伝えられるかが登録の鍵だ。地域の人たちの機運醸成や来訪者の受け入れ体制づくりなども含め、各自治体は登録に向け万全を尽くしてほしい。

 縄文遺跡群は本県の大湯環状列石(鹿角市)、伊勢堂岱遺跡(北秋田市)の2遺跡を含む計17遺跡で構成される。狩猟、採集、漁労をなりわいとして定住した縄文時代の生活や精神文化の実態を示す貴重な物証とされ、世界的な価値が高い。

 イコモスは国連教育科学文化機関(ユネスコ)の諮問機関で、各国の文化財専門家による非政府組織。世界文化遺産候補を現地調査し、登録にふさわしいかどうかを勧告する。

 今回はオーストラリア人の専門家が17遺跡の全てを視察した。現地調査は、政府がユネスコに提出した推薦書の内容が実態と違っていないかなどを確認するのが目的。遺産の保全管理の在り方に重点を置いて調査が進められ、説明に当たった文化庁と4道県側とのやりとりはスムーズだったという。

 4道県は2013年から毎年、国の推薦を目指してきた。昨年、7度目の挑戦でようやく推薦が決まった。現地調査も無事終わり、登録へさらに一歩前進したと言える。

 だが、イコモスは現地調査と並行して推薦書の中身の審査も行っている。まだ気を抜くわけにはいかない。

 縄文遺跡群が国による推薦をなかなか得られなかった理由の一つに、全国に分布する縄文遺跡のうち、なぜ4道県の17遺跡に限定するのか説得力のある説明が困難だったことがある。この点については、イコモスからも説明を求められるはずだ。

 縄文時代を通じて4道県は一つの文化圏を形成していた。17遺跡は草創期から晩期まで縄文の約1万年間のほぼ全ての年代をカバーし、保全状態も良い。

 世界遺産の条件である「顕著で普遍的な価値」を示すために、17の遺跡はどれも不可欠だというのが4道県の主張だ。そんな内容の推薦書に対し問い合わせや指摘があれば、迅速かつ的確に補足の説明をしなければならない。

 通常であればイコモスは来年5月ごろにユネスコへ登録の可否を勧告、来夏の世界遺産委員会で審査され、結論が出る。だが、新型コロナウイルスの影響で今年6月に開催予定だった委員会は延期され、今後の開催見通しも不透明な状態が続く。

 それでも来夏の委員会開催を前提に取り組みを進めるしかない。遺跡の価値を地域住民に理解してもらい、登録に向けた機運を高めることが必要だ。遺跡案内のボランティア養成を進めるなど、各道県、市町は準備を整えたい。

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