滴:ある夫婦の物語(下) 最後の一人になっても

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「かず、しっかりご飯食べてな」。夫は妻の手を取り、耳元で声を掛ける
「かず、しっかりご飯食べてな」。夫は妻の手を取り、耳元で声を掛ける

 「ちゃんと待っているように」

 井川義康さん(80)は、妻のかずさん(77)=仮名=にそう伝えた。かずさんは「分かった」と応じた。2人で秋田市内の総合病院を受診し、義康さんが診察室に入る直前のやりとりだ。

 検査中の義康さんに「奥さんがいなくなった」と連絡が入ったのは、その数分後だった。

 「かず、どごへ行った」

 病院前の県道を真っすぐ行けば、秋田空港方面につながる。自宅へ行くには反対方向だし、とても歩ける距離ではない。所持金もなく、土地勘もそれほどない外出先から妻はたった一人で、どこへ向かっているのか。

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