北斗星(9月25日付)

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 北秋田市の俳人五代儀(いよぎ)幹雄さん(87)が3冊目の句文集「つまくれない」を自費出版した。4年前に78歳で亡くなった妻恵子さんの遺句集「埋(うず)み火」を併せて収めている。発行日の今月12日は恵子さんの祥月命日に当たる

▼俳句大会や吟行にはいつもおそろいで参加するおしどり夫婦だった。「つまくれない」はホウセンカ。昔は墓地に多かった花で、亡き妻への挽歌(ばんか)にも通じる。〈臨終はつるべ落しのごときもの〉〈婚礼の日のような顔棺に入る〉は切ない

▼「埋み火」は恵子さんの好きだった言葉だ。笑顔を絶やさない穏やかさのうちに、消えることのない火を秘めていた証しだろう。〈梅漬けて愚直な妻で押し通す〉〈胸中に泉ひとつをもちて旅〉は静かな決意が伝わってくる

▼句文集には多くの俳句仲間が恵子さんの死を悼む文を寄せた。その中に「丁寧に生きて来られた人の優しさは一挙手一投足に自然に現れるものだと思いました」とある。生前の恵子さんがしのばれる

▼亡くなった年は結婚55年の節目。初めて夫婦そろって敬老式への参加を申し込んだ後に、くも膜下出血で倒れた。かつて母との別れを〈ひとことも言わずに逝けり秋ざくら〉と嘆いた恵子さんが誰とも言葉を交わすことなく旅立った

▼ここ数年、五代儀さんの周囲では俳句仲間の訃報が続いている。老いて生きる厳しさを思う日々だ。そんな中で「20歳近く年下の仲間から助けられ、励まされるから泣けてくる」と語る。仲間はありがたい。

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