社説:電子決済不正利用 安全性の確立こそ急務

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 電子決済サービスを悪用し、銀行口座から預貯金が不正に引き出される被害が相次いでいる。第三者が銀行口座の保有者になりすましサービスを利用しても、決済事業者と銀行はチェックできない仕組みだったことが要因とみられる。普及が進むキャッシュレスの決済サービスや銀行の信頼が揺らいでいる。

 決済事業者と銀行は協力し、他に被害がないか全容解明を急ぎ、被害は全額補償するべきだ。再発防止策を徹底させ、信頼回復に努めなければならない。

 最初に問題が発覚したのはNTTドコモの決済サービス「ドコモ口座」。メールアドレスさえあれば第三者でも開設できるシステムだった。何らかの方法で入手した銀行の口座番号や名義を使って銀行口座を結び付け、預貯金の一部をドコモ口座に移したとみられる。

 ドコモ口座と提携している銀行は全国で計35行。ゆうちょ銀行や地方銀行、計11行で211件、2833万円の被害が確認されている。ドコモは銀行と連携して全額補償する方針。被害者が知らない間に預貯金が引き出されたのだから当然だ。

 不正はドコモ口座だけでなく、大手のペイペイやLINEペイ、メルペイなどでも発覚。被害のあった電子決済サービスは計7事業者に上っている。

 本県の秋田、北都両銀行ではいずれの決済サービスでも、被害は確認されていない。両行をはじめ、各行は電子決済サービスの新規口座登録・変更や入金機能の一時停止などを余儀なくされている。

 本人確認の甘さが不正の拡大につながった。ドコモ口座は元々、ドコモの携帯電話の契約者限定のサービスだった。昨年9月、契約者以外でも開設できるようにしたため、本人になりすまして利用しやすくなった。事業拡大を優先し、安全性を軽視したと言わざるを得ない。

 被害防止に有効な方法に「2段階認証」があるとされる。暗証番号やメールアドレスだけでは、確実に本人かは分からない。数分間だけ有効な「ワンタイムパスワード」をショートメールで送信し、受け取った本人に入力してもらう方法や、指紋や顔を識別する生体認証を使い、もう1回確認することで不正が起きにくくなる。

 大手銀行は導入済みだが、地銀は4割止まり。被害があった11行とドコモは未導入だった。

 銀行側の被害はゆうちょ銀が最大。22日までにドコモ口座以外も含め約380件、約6千万円の被害が判明している。当初はドコモ口座の不正しか公表しないなど対応は後手に回った。かんぽ生命保険の不正販売で批判された日本郵政グループの顧客軽視の姿勢が再び露呈した。経営陣の責任は重大だ。

 電子決済はキャッシュレスの便利さを売り物に、官民で普及を推進してきた。便利な仕組みを安心して使えるよう、サービスの安全性の確立を急ぎたい。

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