社説:菅政権の震災復興 「現場の声」聴き推進を

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 菅義偉首相が就任後初めて東日本大震災の被災地、福島県を訪れた。訪問に当たっては「現場主義に徹して復興をさらに前に進める」と述べた。

 震災から9年半余り、東京電力福島第1原発の処理水への対応や廃炉作業は難航、避難者への支援も十分とは言い難い。菅首相は自らの言葉通り、「現場」の声に耳を傾け、きめ細かな復興政策を進めてほしい。

 ただ、菅政権の震災対応を巡っては早くも疑問を抱かせる出来事があった。初閣議で決定した内閣の基本方針に、震災や原発事故に関する記述が全くなかったからだ。

 この点を問われた平沢勝栄復興相は「いろいろなあれの中であれしたけれども、軽視しているわけでは全くない」としどろもどろになった。復興の責任者として能力に不安を感じさせる発言と言うほかない。

 福島県の復興では原発への対応が難しい課題となっている。放射性物質を含む汚染水が大量に発生、専用設備で処理してタンクに保管しているが、2022年には全てが満杯になる見通しだという。

 政府小委員会が示した処理水の海洋放出処分案に対しては、一部の放射性物質が処理水に残ることから市町村議会が反対や慎重な対応を求めるとする意見書を可決。こうした声を政府はきちんとくみ上げ、被災地をはじめ国民が広く納得できる結論を出す必要がある。結論ありきで進めることは許されない。

 東電と国が目指す41~51年までの廃炉完了に対しては、日本原子力学会が疑問を投げ掛けている。施設などの解体後は大量の放射性廃棄物が発生、敷地の再利用が可能となるまで最短で100年以上かかるとの見方を示している。廃棄物や汚染土をどこに保管すべきかという問題も出てくる。これらへの対応についても政府ははっきりと、責任を持って説明すべきだ。

 震災避難者が全国に約4万3千人いることも忘れてはならない。支援は行政と民間団体が担う。個人情報を管理する行政と民間との協力関係がうまくいかず、全国に散らばった人を追跡する際の壁になっている。どこに避難しても生活再建を支えられるよう、行政と民間の情報共有をもっと進める必要がある。

 震災関連死は約3700人に上る。申請が市町村に認定されると弔慰金が支払われる。しかし認定基準にばらつきがあることから、遺族間で不公平感が生じかねない。全国共通の基準作りや関連死事例のデータベース化を求める声もあり、政府は自治体と連携して対応を急ぐことが求められる。

 安倍前政権は21~25年度の5年間を「第2期復興・創生期間」と位置付け、事業費を確保した。菅政権はこれをどう継承、発展させるのか。長期展望を含め復興と原発事故対応の各課題を洗い出し、一つ一つを確実に推し進めなければならない。

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