北斗星(10月3日付)

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 秋田公立美術大の卒業式で昨年3月、謝辞を述べる学生がイージス・アショア配備計画に触れた一言を原稿に盛り込んだ。しかし大学事務局から削除を要請され、その部分は語られなかった。学問や表現の自由を侵す行為だと学内の教授陣からも批判が上がった

▼学問の自由を侵害する事件は戦前、京都帝大教授の刑法学説を文部省が問題視して休職処分にした「滝川事件」などたびたびあった。現憲法が「学問の自由は、これを保障する」(23条)と明記しているのは、戦前の反省に基づくものだ

▼「『とんでもないところに手を出してきたなこの政権は』と思った」。京都新聞が1日夜に電子版で報じたインタビュー記事で、立命館大法科大学院の松宮孝明教授(刑事法学)がこう述べていた。日本学術会議が推薦した新会員候補のうち、菅義偉首相が任命を見送った6人の中の1人だ

▼松宮氏は、共謀罪の趣旨を盛り込んだ改正組織犯罪処罰法への反対意見を2017年に表明している。インタビューでは「学術会議や大学を言うがままに支配したいということの表れ」「学問の自由に対する挑戦」と強く批判している

▼秋田美大の件では学長が卒業生代表に謝罪。翌月の入学式のあいさつで「大学は学問の自由、表現の自由を大事にするところです」と述べるに至った

▼官房長官時代、とかく強権的との批判がつきまとった菅氏。就任1カ月もたたずに直面した問題への姿勢は、首相としての今後を占う試金石だ。

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