社説:米大統領退院 コロナ軽視、広がる懸念

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 新型コロナウイルス感染で、軍医療センターに入院していたトランプ米大統領が退院した。3日ぶりにホワイトハウスに戻り、報道陣のカメラに健在ぶりをアピール。ツイッターで「新型コロナを恐れるな」と発信した。早い回復は朗報でも、トップのこうした姿勢はコロナ軽視を広めかねない懸念がある。

 トランプ氏は新型コロナ感染で倦怠(けんたい)感や微熱、せきの症状が出たため入院。74歳と高齢で重症化が心配されたが、専属医の言う「世界最高水準の医療」によって早期退院に至った。

 投票日まで1カ月を切った大統領選の世論調査では民主党のバイデン前副大統領にリードを許して劣勢に立つ。そのため早期に通常の職務に戻る姿勢を示し、挽回につなげたい思惑だろう。しかし完治しないままの職務復帰は周囲への感染拡大の恐れもあり、看過できない。

 周辺では既にメラニア夫人をはじめ、ヒックス大統領顧問、マクナニー大統領報道官、報道担当のスタッフ、与党共和党議員らが相次いで感染している。感染拡大が懸念される中、トランプ氏本人とその周辺で、どのような感染防止対策が行われていたのかが問われる。

 トランプ氏のマスク嫌いは有名だ。それを反映して、ホワイトハウスのスタッフ間でマスク着用を徹底しなかったのも感染が拡大した一因とされる。

 トランプ氏は大統領選の遊説の際にマスクをせず移動し、選挙集会ではマスクを着けない多数の支持者の参加を容認していた。これではあまりにもコロナ対策軽視と言わざるを得ない。

 米ジョンズ・ホプキンズ大の5日現在の集計によると、米国の新型コロナ感染者は約741万人、死者は約20万9千人。感染者・死者のいずれも世界の2割以上を占める深刻な状況だ。

 世論調査で「トランプ氏がコロナを深刻に受け止めていれば感染を防げた」との回答が65%に上ったことを重く受け止めるべきだ。トップの新型コロナに対する言動が感染被害の拡大と無関係であるはずはない。

 直接対決となる大統領選の候補者討論会は、あと2回行われる予定だ。トランプ氏がこれに出席して、先行するバイデン氏の逃げ切りを阻止できるかどうか。また、そこでどんな発言をするかが注目されている。

 米大統領は超大国のトップとして常に「核のボタン」を身近に置くなど、その任務の重大さはいまさら言うまでもない。世界的に落ち込んだ経済の立て直し、米中対立をはじめとする外交問題、国内の人種対立激化といった諸課題にどう取り組むのか、世界が注視しているのだ。

 新型コロナに感染した誰しもが「最高水準の医療」を受けられるわけではない。世界を脅かしている感染症を軽んじることなく、米大統領がリーダーシップを発揮して収束へ向かわせる責任を果たすことを世界が望んでいる。

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