滴:記憶(下) いつか伝えたかった

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「地球上から、戦争がなくなってほしい」と語る恵美子さん
「地球上から、戦争がなくなってほしい」と語る恵美子さん

 戦争は終わった。しかし、大黒柱の父がいない一家の暮らしは、厳しかった。

 「母の着物を持って2人で山奥の農家に行って、野菜や米と取り換えてもらいました。ある時、私のレースのワンピースと靴を母が差し出したんです。『私の物だからあげないで』って駄々をこねました」。大井恵美子さん(79)さん=秋田市東通=が幼い頃の記憶をたどる。

 当時、母が小さなリュックサックを作ってくれた。うれしくていつも持ち歩いていた。農家に「物々交換」に行く日も背負っていた。「行きは空っぽなので軽いんですけど、戻りはリュックがお米でいっぱいになる。帰りの金照寺山の上り坂を上れなくて、泣きました」

 母は、父の話をしなかった。恵美子さんもしなかった。「帰ってくる」と思っていたのだ。

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