社説:学術会議任命拒否 不透明さ増す政府説明

お気に入りに登録

 日本学術会議の会員人事を巡り、推薦された候補105人のうち6人の任命を拒否した問題で、菅義偉首相は学術会議提出の推薦者名簿を見ていないと発言した。拒否の理由や経緯は不透明さを増すばかりだ。政府は今回の任命拒否が法に反しないとする根拠を明確に示し、説明を尽くすべきだ。

 6人はいずれも人文・社会科学分野の研究者。安全保障関連法などを巡り、政府方針に異論を唱えたことがあり、それが任命拒否の理由との見方もある。日本学術会議法は会議の推薦に基づき首相が会員を任命すると定める。推薦候補の任命を拒否したことは学術会議の独立性を損なう恐れがあるとして、批判が高まっている。

 菅首相は、政府批判は「(任命拒否とは)一切関係ない」としている。6人には政府批判以外に、任命するにふさわしくないと判断する別の理由があったことになる。だが首相は「総合的、俯瞰(ふかん)的な」観点から判断したと述べるだけで説明は具体性を欠き、説得力に欠けている。

 このため、政府方針に反する学者を狙い撃ちしたとの疑念は消えていない。学者の間では、活動の萎縮につながると危ぶむ声が上がっている。学問の世界に自由な批判を控える風潮が広がることはあってはならない。

 杉田和博官房副長官が、候補のうち複数人を任命できないと首相に事前報告していたことも明らかになった。加藤勝信官房長官は「首相が一人一人チェックしていくわけではなく、事務方に任せていた」「最終的には首相が決裁し、決めている」などとして、あくまで首相の判断だったと強調するが、不透明感は否めない。

 学術会議は日本の学者を代表して政策を提言したり、社会問題に関して声明を出したりする。今年出した提言は60件を超えている。2020年度予算は10億4千万円だが、うち4億3千万円が事務局の人件費。210人の会員への手当(日当)は計7192万円で6・8%だ。年度後半には予算が不足し、交通費を自己負担する会員もいるのが現状だ。

 政府、自民党は学術会議に国費を支出する妥当性や会員推薦の決定方式などを見直す方針を打ち出した。任命拒否の理由を説明せずに、学術会議の在り方を議論するのは論点のすり替えであり、会議側への圧力ともなりかねない。

 学術会議は政府に6人の任命を求めるとともに、任命拒否した理由の明確化を要求。さまざまな学会や大学が抗議の声を上げ、任命拒否の撤回を求める14万筆以上の署名が内閣府に提出された。政府はこうした声に真摯(しんし)に耳を傾けるべきだ。

 安倍前政権は森友・加計学園問題や桜を見る会の問題で、説明責任を果たす姿勢が見られなかった。菅政権は説明軽視の姿勢を前政権のレガシー(遺産)として継承してはならない。

秋田の最新ニュース