社説:菅政権1カ月 目指すべき社会像語れ

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 本県出身の菅義偉氏が首相に就任して、きょうで1カ月となる。約7年8カ月に及んだ安倍前政権の「継承と前進」を掲げる菅政権は、「国民のために働く内閣」が基本方針だ。

 「働く内閣」はどのような政治を目指すのか。菅首相の言葉によれば「行政の縦割り、既得権益、あしき前例主義の打破」ということになるだろう。

 菅政権発足後、矢継ぎ早に打ち出された政策や方針を見ればそれが分かる。デジタル庁の創設をはじめ、初診からのオンライン診療恒久化など「デジタル」を軸にしたものが並ぶ。

 中でもデジタル庁は看板政策だ。政府の情報システムを変革し、利便性の高いデジタル社会の実現を目指すという。各省庁や自治体のシステム共通化などを想定し、縦割り打破の象徴にしたいとの思惑もにじむ。

 ただ、デジタル庁についてはその姿がよく見えない。システム共通化で見込まれる莫大(ばくだい)な費用とその効果とのバランスは取れるのか。セキュリティーは十分に確保できるのか。そうした疑問が拭えない。初診からのオンライン診療恒久化は、触診や機器による診断ができず不適切な治療となる恐れはないか。

 携帯電話料金の引き下げにも強い意欲を示す。新型コロナウイルスの感染拡大で影響を受けた家計の負担軽減などを図る。引き下げは携帯大手の既得権益打破の象徴ということになる。だが引き下げの前提として、利用者が求める料金体系やサービスを把握するのが先だろう。

 「働く内閣」の実現を急ぐあまり、デジタル化などに伴う問題への対応をおろそかにしてはならない。それ以上に大切なのは菅政権の目指す社会像だ。政権発足から1カ月たつが、それがなかなか見えてこない。

 今月に入って表面化したのが日本学術会議の任命拒否だ。会議が推薦した会員候補のうち、菅首相は6人を拒否。政府は税金を投じて運営する会議を行革対象にするとした。

 これも前例主義や既得権益の打破の象徴としたいからだろうが、任命拒否と組織の在り方は別問題だ。数ある事業や団体から、なぜ真っ先に会議を選んだのか納得できる説明もない。不都合な問題についてこそ、説明してもらいたい。

 前政権の「負の遺産」を見ると菅首相は来年以降の桜を見る会中止を表明。森友・加計問題は「結論が出ている」などとして決着済みとの姿勢を貫く。

 このままでは、前政権の「分断」の政治を継続することになりはしないか。菅政権に求めたいのは政権に不利な問題でも正面から受け止め、言葉を尽くして説明し、非があれば率直に認める謙虚な政治姿勢だ。

 26日召集の臨時国会で菅首相は所信を表明する。コロナ時代の目指すべき社会像をどう描き、方向性を示すのか。一国の首相として大局的な視野に立った言葉を語るべきだ。

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