社説:最高裁格差判決 待遇改善へ本腰入れよ

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 非正規労働者と正社員との待遇格差を巡る訴訟5件で最高裁が判決を下した。賞与と退職金では原告の非正規労働者側の訴えを退ける一方、手当と休暇に関しては企業側の差別的扱いの違法性を認めた。

 待遇格差是正のため国は「同一労働同一賃金」政策を進めている。だがガイドラインは非正規労働者の賞与に関し「正社員と同一の貢献には同一の、違いがあれば違いに応じた支給を行わなければならない」とするなど曖昧な部分も多い。具体的な対応は企業任せになっており、司法の判断が注目されていた。

 原告である大学の元アルバイト職員は賞与支給を訴え、地下鉄会社の子会社の元契約社員らは退職金を求めたが、認められなかった。判決は複雑な仕事の有無、異動の可能性など正規・非正規の違いを重視。正職員の確保、正社員が働く動機付けなど経営側の事情にも配慮した。

 一方で最高裁は、日本郵便の契約社員らが起こした訴訟3件に関し、原告が要求した扶養手当、夏期・冬期休暇など5項目全てを認めた。職務にかかわらず、継続的な勤務には必要との判断からだ。日本郵便では郵便事業に携わる社員約39万人のうち契約社員が約半数を占めるだけに、判決の影響は大きい。

 給与・手当の性格や支給の趣旨を詳細に検討した結果、判断が分かれた。格差訴訟の「本丸」とも言うべき賞与や退職金では是正の道筋が示されず、全体としては非正規にとって厳しい内容となった。

 ただ、賞与や退職金に関して最高裁は「不合理な格差と認められる場合はあり得る」とも指摘した。今回のケースに限り、業務や責任の程度が正社員と異なるため、待遇格差は不合理ではないとの判断だ。全ての非正規に賞与や退職金が必要ないとしたわけではない。各企業などにおける賞与、退職金の性質や支給目的を踏まえて検討すべきだと示したことは評価できる。

 同一労働同一賃金は働き方改革関連法に盛り込まれ、今年4月から大企業に適用。来年4月から中小企業も対象となるが、何をもって同一と言うのか定義が明確でない。国は現行のガイドラインを根本から見直し、もっと分かりやすくすべきだ。

 非正規の待遇改善は喫緊の課題だ。安倍晋三前首相は「非正規という言葉を一掃する」と表明したが、依然増え続け、昨年は2165万人と労働者全体の約4割を占めた。新型コロナウイルス感染拡大による経済悪化で雇い止めや解雇が止まらず、非正規が「雇用の調整弁」であることが露呈した。前政権の継承を掲げる菅政権は格差是正に本腰を入れなければならない。

 企業側も、非正規を都合のいい存在として不安定な身分に置き、不合理な格差を強いてはならない。それは社会的要請でもある。非正規の業務を再点検し、それに見合った待遇を実現することが求められる。

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