社説:子宮頸がん予防 正しい情報提供が重要

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 子宮頸(けい)がんを予防する「HPVワクチン」について県民に周知を図るプロジェクトを、県医師会がスタートさせた。ワクチンは接種費用が公費で賄われる「定期接種」であるにもかかわらず、国内の接種率は1%未満に低迷。存在すら知らない人も増えている。プロジェクトをきっかけにワクチンへの理解が深まることを期待したい。

 子宮頸がんは性交渉などで感染するヒトパピローマウイルス(HPV)が主な原因。日本では年間約1万人が発症し約3千人が死亡。20~30代の発症者が増えている。予防にはワクチン接種と定期検診が有効とされる。だが接種率は極めて低く、検診の受診率も4割程度にとどまっているのが現状だ。

 HPVワクチンは2006年に欧米で使われ始め、日本は09年に承認。13年4月に小学6年~高校1年の希望する女子が定期接種できるようになった。その2カ月後、国は自治体に対し「積極的な接種の呼び掛け」を中断するよう勧告した。接種後に全身の痛みなど健康被害を訴える人が相次いだためだ。国や製薬会社に損害賠償を求める訴訟も起きている。

 どんなワクチンにも副作用のリスクがあり、HPVワクチンも例外ではない。接種後の腫れや赤みのほか、慢性の痛みや運動機能障害などが報告されているが、接種との因果関係は証明されていない。健康被害を恐れて接種をためらう保護者も一定数いるとみられる。当初の接種率は70%以上だったのに事実上の休止状態に至ったのは、そうした不安の表れだろう。

 世界保健機関(WHO)はワクチン接種を推奨。現在100カ国以上で公的接種が行われ、英国やオーストラリアなどは接種率が8割に上る。WHOは「日本は予防できるがんに無防備だ」と、国の姿勢を批判している。

 定期接種でありながら、積極的に勧めないという矛盾した国の姿勢には疑問が残る。定期接種を実施する全国の自治体には、無料で接種を受けられることを対象者一人一人に個別通知する動きが出てきた。県内では18年度の藤里町を皮切りに、19年度は秋田市、由利本荘市、にかほ市、本年度は能代市の計5市町が個別通知を開始。通知を機に接種する例も増えている。

 こうした中、県医師会は一層の周知を図るためにプロジェクト委員会を設立。子宮頸がん予防にワクチンが有効であることを理解してもらい、接種率向上につなげる狙いがある。

 子宮頸がんで子宮を摘出することになれば、妊娠の希望もかなわない。場合によっては命に関わる危険もある。ワクチンを接種するかどうかの判断は個人に任されているが、自治体には定期接種であるHPVワクチンについて広く知らせる役割がある。県医師会は県、市町村と連携し、正しい情報が接種対象の全ての女性に届くよう、速やかに取り組みを進めてほしい。

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