北斗星(10月18日付)

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 浄瑠璃や歌舞伎で有名な八百屋お七は江戸時代に実在したとされる。吉三という若者に失恋し、死後に風邪の神になったとの伝承があった。吉三を捜して家々をのぞき回り、風邪を広めると恐れられた

▼歴史学者・磯田道史さんの「感染症の日本史」(文春新書)によると、国内だけで45万人が亡くなった「スペイン風邪」が流行した100年前、浅舞町(現横手市)の住民は「キチサンオリマセン」と書いた紙を逆さまにして門口に張ったという。吉三はいないからのぞかないでと、懸命な祈りを込めたのだろう

▼春先の新型コロナウイルス流行の「第1波」では、やはり江戸時代の妖怪アマビエが注目された。病がはやったら自分の写し絵を人々に見せるよう告げたとされる。未知の感染症が猛威を振るう時、迷信のようでも何かに頼らずにいられない心理は、現代でも変わらないのかもしれない

▼スペイン風邪や第1波と6月以降の「第2波」で違うのは、3密回避など感染防止策の有効性が確かめられ、国民が経験を積んだことだろう。医療現場の対策も進んだ。感染者は増えたが死者数は減っている

▼もちろん油断は大敵。9月の4連休後、新規感染者数が再び増えてきた地域があることが政府の対策分科会で報告された。専門家は冬にかけ「第3波」が起きることに警戒を呼び掛ける

▼インフルエンザとの同時流行も懸念されている。改めて感染防止策を徹底し、感染せず感染させないよう互いに心掛けたい。

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