社説:イージス代替策 ゼロベースで検討必要

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 本県と山口県への配備計画を断念した地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の代替策について、政府は年末までに方向性を示す考えだ。前のめりの議論を避け、そもそも代替策が必要なのかゼロベースでの検討を基本とするべきだ。

 地上イージス断念は6月。迎撃ミサイルの推進装置「ブースター」を安全な場所に落下させることができないという技術的問題が判明した。防衛省は経緯を検証。米側との協議と地元説明を同時並行した結果、説明に慎重さや誠実さを欠いたことを認めた他、米側が開発しているため、防衛省の知見が不十分だったなどとした。

 政府が急いでいるのは地上イージスを巡る米企業との1788億円の契約があるからだ。地上イージス用のレーダーや迎撃ミサイル発射装置を有効に活用できず解約する事態になれば、1千億円超の違約金を支払わなければならない可能性もある。

 現時点では、レーダーと発射装置を共に洋上で運用する案に絞られている。地上イージスの装備品を、弾道ミサイル迎撃に特化した海上自衛隊専用艦や護衛艦、あるいは民間船舶に搭載する案だ。政府は技術的課題についての調査を、来年4月末まで三菱重工業などに委託した。代替策の方向性は調査結果が出てから決めるのが筋だろう。

 米国防当局は、地上イージスのシステムを洋上に転用した実績が乏しく「技術的に難しい」と日本側に非公式に伝達した。イージス艦増隻が適当との考えを示しているという。米側が困難視する案を進めようとする政府には確かな見通しがあるのだろうか。無理して推し進めれば、システム改修に伴いコストがさらに膨らむ恐れもある。

 防衛省は2021年度予算の概算要求を過去最大の5兆4千億円超とした。代替策は金額を示さない「事項要求」とし、額の決定を先送りした。防衛費は8年連続で増加している。新型コロナウイルス感染症対策で予算がかつてない巨額に膨らんでいる中、防衛費を聖域にすることはできない。

 20年版防衛白書は北朝鮮が開発を進める短距離弾道ミサイルは「ミサイル防衛網の突破」が目的で、発射兆候の把握が困難になりつつあるとした。そうした状況下で、そもそもイージスによる迎撃体制増強が有効かどうか。その検証が求められる。

 菅政権は安倍前政権から、相手領域内で弾道ミサイルを阻止する「敵基地攻撃能力」の保有に関しても検討姿勢を引き継いだ。与党内からも懸念の声が上がっている通り、日本の防衛政策の基本である「専守防衛」を逸脱する懸念が大きい。

 何より重要なのは北朝鮮と対話を進めるなど、外交努力による平和の維持を最優先して安全保障政策を進めることだ。イージス代替策を防衛、外交政策の全体の中に位置付け、冷静で慎重な議論を重ねるべきだ。

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