ローカルメディア列島リレー(14)ピストン藤井

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 全国のローカルメディアの作り手が、ローカルならではのメディアの形や取り組みについて綴るリレーエッセイです。紙もウェブも、看板やアートプロジェクトだって「ローカルメディア」に?! 特色あるローカルメディアの担い手たちのアイデアと奮闘の記録です。



ミニコミで地元を知る


 富山在住のライター、ピストン藤井と申します。地元を斜め横から愛でるミニコミ誌*『郷土愛バカ一代!』を作っています。我が故郷はゴリゴリの保守大国。結婚し、家を建て、子どもを育てるという価値観が根強い土地柄です。2008年に東京から帰郷した当時アラサー独身女だった私は、属性だけで既にはみ出し者でした。だったら「そうです! 私が変なおばさんです!」と開き直り、地元を面白がってしまえと半ば逆ギレでミニコミを作り始めました。その結果、既存の枠を横滑りする珍妙な人々と遭遇します。「ババアとガキが大嫌い!」と言い放つビリヤード場の女主人(御年90歳)、両親から継いだ食堂を昭和秘宝館に変貌させたドラ息子、富山弁と下ネタを合わせた奇想天外スイーツを生む土産店の女将。みな胸焼けするほどアクが強い。でも誰も孤立はしていません。旧態依然とした共同体に関わりながらも、てんでばらばらに突っ走っている。それが救いでした。私には故郷に対し「愛着はあるが生きづらい」という相反する気持ちがあります。どちらかに折り合いをつけようとしてきました。でも複雑な思いを抱えたままでも居場所は生み出せる。ミニコミ制作を重ねるうち、保守一辺倒だと思い込んでいた地元が、ちぐはぐな個性が行き交う懐のでかい街だと実感したからこそ、そう思えました。私にとってミニコミは情報を伝える媒体ではなく、私自身が地元を知り、地元で生きるための術です。中身は「うんこチンチン!」としか言ってないようでいて実は結構、切実。

 よかったら読んでやって下さい(『ひらすま書房』のサイトで販売中)。

*ミニコミ誌:自主制作による少部数発行の雑誌のこと

ピストン藤井/ライター
1979年富山市生まれ。東京で雑誌編集に携わったのち2008年に帰郷。地元でライター活動を始める。2019年、本名の藤井聡子名義で初エッセー『どこにでもあるどこかになる前に。富山見聞逡巡記』(里山社)を刊行。

関連リンク

・郷土愛バカ一代!
・里山社
・ひらすま書房 WEB SHOP

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