社説:菅首相 初の外遊 発揮したい独自カラー

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 菅義偉首相は就任後、初の外遊となったベトナム、インドネシア訪問で「自由で開かれたインド太平洋」構想の実現に取り組む考えを表明した。そのため東南アジア諸国連合(ASEAN)との「緊密な連携」を主導する姿勢を示している。

 構想は今月上旬に東京で開かれた日本と米国、オーストラリア、インドの4カ国外相会合で一致していた。名指しを避けながらも中国について「法の支配と逆行する動きが南シナ海で起きている」とけん制。一方で「インド太平洋版の北大西洋条約機構(NATO)をつくるものではない」としたのは警戒感を強める中国への配慮だろう。

 今回訪問の両国は安倍晋三前首相の第2次内閣発足直後、2013年の初外遊先と重なる。「安倍外交の継承」を内外に印象付ける狙いもあったと言える。

 安倍氏はトランプ米大統領と蜜月関係を築くとともに、中国の習近平国家主席との関係にも心を砕いてきた。米中両大国間でのバランス外交は菅首相にとっても最大の課題だ。

 訪問した両国を含むASEAN各国も米中対立の板挟みに悩む。それを思えば「菅外交」の出発点にふさわしい地域だったのではないか。新型コロナウイルスの影響を踏まえ、サプライチェーン(部品の供給・調達網)の強靱(きょうじん)化を図るなど経済的結び付きの強化もアピールした。

 今回の外遊では新型コロナ対策のため、さまざまな制約があった。欧州をはじめ、訪問が容易ではない感染拡大地域はまだまだ多い。「地球儀を俯瞰(ふかん)する外交」を掲げた安倍氏のように世界各国に外遊するのは当面難しいと考えられる。

 対米関係では11月の大統領選が終わって新政権が発足しなければ、協力強化などの協議に本腰を入れられない。対米外交が動くまでは対中国、対ロシア外交も大きな進展は見込めないだろう。韓国、北朝鮮との関係は安倍前政権からの行き詰まり状態が続く。菅外交の行方は相当厳しいと言わざるを得ない。

 外交面で菅カラーはいまだ見えてこない。「携帯電話料金引き下げ」「デジタル化推進」「不妊治療の保険適用」などが矢継ぎ早に打ち出される内政面とは大違いだ。

 世界がコロナ禍のまっただ中でも、コロナ後を見据えた外交を止めるわけにはいかない。安全保障や経済などに加え、芸術や文化、観光などのアピールで日本への好感度や親密度を高める努力も求めたい。

 それは首相が力を入れてきたインバウンド(訪日外国人客)需要を高める。東京や京都など主要観光地のみならず、地方の優れた観光地に目を向ける動きにもつながるのではないか。

 日本の魅力を広く伝えることは、少子高齢化で一層重要になる海外からの技能実習生や看護師・介護福祉士などの招請への後押しにもなる。菅外交の独自カラーを発揮してほしい。

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