北斗星(10月23日付)

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 「福島の復興なくして東北の復興なし。東北の復興なくして日本の再生なし」。菅義偉首相は先月東日本大震災で被災した福島を訪れた際こう強調した。安倍政権の方針継承だという

▼似たフレーズをだいぶ前に聞いた気がする。調べてみると、連立政権で首相となった旧民主党の野田佳彦氏が2011年9月の就任会見で語っていた。「福島の再生なくして日本の再生はない」。言葉だけを見れば、菅氏はむしろ、安倍政権より野田政権の影響を受けているような印象を受ける

▼その菅氏は12年に刊行した単行本「政治家の覚悟 官僚を動かせ」で民主党による政権運営を批判した。とりわけ、震災後の議事録の保存状態を問題視。「政府があらゆる記録を克明に残すのは当然で、議事録は最も基本的な資料です。その作成を怠ったことは国民への背信行為」と訴えた

▼それなのに、である。今月20日に発売した改訂版では「公文書管理の重要性」を唱えた当該部分をばっさり削った。桜を見る会や森友・加計学園を巡る問題で公文書のずさんな管理が批判され、言行不一致が気になったのだろうか

▼著書の内容は著者が決めることだ。とはいえ一国の首相の本である。記録保存の大切さを訴えた部分をわざわざそぎ落とすとは相当な「覚悟」だ

▼世間の耳目を集めて売り上げを伸ばす炎上商法か。それとも目的を遂げるためなら公文書の改ざんだってやるんだという意思表示か。永田町では暗い臆測ばかりが飛び交う。

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