北斗星(10月24日付)

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 スカーフにコート姿でほほ笑むうら若い女性の写真からその連作は始まる。大仙市の写真家大野源二郎さん(96)が昭和40年前後に撮影した「農婦誕生」だ

▼女性は山一つ越えた集落の農家に嫁入り。嫁ぎ先で行われた披露宴の様子が時代を感じさせる。その後は農作業に励む姿や板の間の片隅で一人で昼食を取る光景、生まれて間もない赤ん坊を抱く姿などが続く。わずか十数枚の白黒写真にさまざまなドラマや思いが秘められているようで胸が熱くなった

▼横手市の県立近代美術館で大野さんの写真展が開かれている。農婦誕生を含む20~40年代の農村風景「土恋いのうた」、統廃合が進む全県の小規模小学校や分校を平成の初めに撮影した「学び舎」の2部構成。計300点ほどが並ぶ

▼集団就職で旅立つわが子らを駅で見送る人々の姿も印象的だ。都市への人口流出が進み、農村が変貌を遂げていった時代がありありと伝わってくる。小学校風景では少人数で懸命に学ぶ子どもたちの姿がほほ笑ましく、閉校後の校舎は懐かしくも寂しい思いになる

▼大野さんは本紙連載「時代を語る」の中で土に生きる農民の思いや人間性を表現したいとし、自作を「秋田弁の農村写真」と説明している。美術館は大野さんから700点超の作品の寄贈を受けた。今回がそのお披露目という

▼撮影された当時を知る年配者も知らない若者も、郷土の歩みを振り返るいい機会。今の秋田と引き比べ、さまざまなことを考えさせられる。

写真家・大野源二郎さんに自身の歩みを語ってもらいました

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