社説:コロナ下の交換会 原点を見つめる機会に

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 今年の県種苗交換会は30日、横手市の横手体育館を主会場に開幕する。新型コロナウイルス感染防止対策として、通常7日間の会期を5日間に短縮、最新の農業機械を紹介する農業機械化ショーなど一部行事を中止しての異例の開催となる。例年よりもイベント色は薄まるが、交換会の原点といえる本県の農業振興を考える場としたい。

 交換会のルーツは1878(明治11)年9月に秋田市で開かれた県主催の「第1回勧業会議」と同年11~12月の「種子交換会」にある。農作物栽培に関する知識や技術を情報交換する勧業会議は種苗交換会のメイン行事「談話会」の前身だ。イネや野菜の優良な種子を普及させるための種子交換会は、種苗交換会のもう一つの柱である「農産物出品展示」につながる。

 本県農業の発展を目指した二つの行事は4年後に一本化された。今回で143回の歴史を刻む交換会の目的は、今も変わらない。

 今年の談話会のテーマは「しいたけ振興の取り組みについて」だ。県産シイタケは園芸メガ団地の整備が進み、生産量が増加。京浜地区の中央卸売市場では2019年度に出荷量、販売額、販売単価がいずれも都道府県別でトップに立つなど市場評価の高い有望な品目だ。ほぼ全量が通年出荷ができる菌床栽培であり、冬期でも収益が見込めることから有利性がある。

 横手市は全県のシイタケ生産量の5割以上を占める産地。談話会では栽培のメリットや課題を話し合い、一層の生産拡大への道筋を描いてほしい。コメ依存という本県農業の構造改善を進めるためにも、シイタケ以外の園芸作物振興の可能性を探る議論にも期待する。

 農産物出品展示は千点余りとなる。3密回避のために点数を例年のほぼ半数に絞り込むが、技術の粋を凝らした高品質の農産物は多くの生産者に刺激を与えてくれるはずだ。今回は初の試みとして、展示会場や審査の様子を動画配信する。来場できない多くの県民、全国の消費者に秋田の農業を知ってもらう機会としたい。

 同市で前回開かれた11年の交換会では主催者発表で108万人もの来場者があった。秋田市の竿燈まつりをはじめ、例年多くの観客を集める県内のイベントが新型コロナの影響で軒並み中止を余儀なくされており、交換会は春先以降では初の大規模な催しだ。今後の大型イベント開催の参考となるよう、主催するJA秋田中央会と地元横手市の協賛事業実行委員会には感染防止へ細心の注意を払ってほしい。

 各会場では消毒や換気を徹底するほか、入退場口に体温を測定するサーマルカメラを設置、手指消毒やマスク着用を義務付ける。混み合う場合には入場制限も実施するという。来場者もこれらの対策に協力し、安全に農業の祭典を楽しみたい。

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