社説:核禁止条約発効へ 被爆国の責務を果たせ

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 核兵器禁止条約の批准国・地域が発効に必要な50に達し、来年1月下旬に発効することになった。これまでも核兵器削減などを目指す条約はあったが、核兵器の開発や実験、製造、保有、使用などを全面的に禁止する条約は初めてだ。画期的な成果として高く評価される。

 日本は唯一の戦争被爆国であるにもかかわらず、政府は米国の「核の傘」に依存していることを理由に一貫して条約に参加しないとしてきた。採択などに努力した広島、長崎の被爆者の願いを無にしてはならない。条約の締約国会議は核廃絶へ向けた世界の動きに影響を与える可能性がある。その議論に積極的に加わることは日本の責務だ。

 50番目の批准国は中米のホンジュラスだった。条約は2017年、122カ国・地域の賛成で国連で採択された。被爆者が世界各地を訪ね、被爆体験を伝えるなどして条約制定に貢献。制定の原動力となった非政府組織(NGO)「核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)」はノーベル平和賞を受賞した。

 前文は被爆者の「受け入れ難い苦しみ」に留意すると明記。核兵器を使用するとの威嚇も禁じることで核抑止力を否定する。核兵器を絶対悪と定める国際規範が核兵器廃絶への一歩前進となることを期待したい。

 一方、米ロ中英仏の五大核保有国や、保有国の核抑止力に頼る同盟国は条約に背を向けたままだ。不参加国には条約の順守義務はない。その中に日本も含まれているのは極めて残念だ。将来の署名・批准も視野に、オブザーバー参加から始めるなど柔軟な姿勢を望む。

 政府が懸念するのは中国と北朝鮮の動向だ。中国は200発超とみられる核弾頭を保有する。迎撃困難な新型ミサイルの開発も進めている。北朝鮮は日本を射程に収める弾道ミサイルを数百発保有しているとみられる。こうした状況で、同盟国の米国を差し置いて核禁止条約に賛同するわけにはいかないというのが政府の立場だ。

 米国をはじめ核保有国側は核拡散防止条約(NPT)など、現行の枠組みを生かした核兵器の段階的削減を主張する。だが近年の米ロ中は核軍拡の様相を強めている。米ロの中距離核戦力(INF)廃棄条約は失効。包括的核実験禁止条約(CTBT)は米国の反対で発効の見通しが立たないなど核廃絶に向けた進展はなく、後退の恐れもある。核禁止条約が保有国への圧力になることは、むしろ歓迎すべきことと言える。

 日本は核禁止条約に消極的な一方で、自ら核廃絶という目標を掲げ、保有国と非保有国の「橋渡し役」を務めるとしている。米国頼りではない主体的な取り組みを進め、中国、北朝鮮との関係改善に努めるべきだ。国際的な核廃絶の機運の高まりを生かし、非保有国の声を代表して米国などを説得する積極的な姿勢を求めたい。

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