社説:やさしい日本語 災害発生に備え普及を

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 外国人に分かりやすいように配慮した「やさしい日本語」への注目度が高まっている。活用する自治体が増えており、一層の普及が期待される。

 在留外国人の数は法務省の統計で6月末現在、288万人超。新型コロナウイルス感染拡大に伴う入国制限などで昨年末に比べ微減となったが、外国人の受け入れを拡大する改正入管難民法が昨年施行されており、新型コロナが収束すれば、今後は再び増えていくことが見込まれる。国際化が進む中、いかに外国人にスムーズに情報を伝えるかが問われている。やさしい日本語は、その鍵を握る大切な表現方法の一つと言えよう。

 「けさ」を「きょうの朝」、「再度」を「もう一度」、「使用禁止」を「使うことができません」と言い換えるなど、できるだけ平易な表現を心掛ける。最も重要なのは災害時の表現だ。「大雨警報です」は「雨がたくさん降ります。気を付けてください」などとなる。言葉の意味をよく理解できないために逃げ遅れたとなれば、取り返しがつかない。情報発信する際は、外国人の立場を十分考慮しながら言葉を選びたい。

 きっかけは1995年の阪神大震災だ。地震発生後、外国人の多くが正しい情報を把握できずに混乱したり、孤立したりした。それを知った国内の言語研究者たちが、どんな言葉を使ったら情報が迅速かつ正確に伝わるか研究を進めた。

 その結果、緊急時は外国人一人一人にそれぞれの母国語で通訳するのは難しく、むしろ平易な日本語を使った方が効果的であることが判明。研究の中心となった弘前大学のチームなどがさまざまな使用例を考え、ホームページで紹介したところ、国や自治体に活用が広がった。

 千葉県船橋市は10年以上前から活用。やさしい日本語を加えた外国人向け防災ガイドブックを作成し、内容を定期的に更新している。横浜市もやさしい日本語の例文集をつくったり、職員向けの講習会を開いたりして普及に努めている。

 大都市圏は在留外国人が多く、災害時に情報伝達を徹底するのは容易ではない。それだけに日頃の備えが大切だ。今後とも地道に浸透を図ってほしい。

 地方は在留外国人の数が比較的少ないとはいえ、通訳の数が十分ではない。やさしい日本語は大きな助けになるだろう。本県でも県がホームページで、外国人向けの情報提供を英語や中国語に加え、やさしい日本語でも実施。県民に周知するためのコーナーも新たに設けた。

 多文化共生社会の実現には、外国人にとって暮らしやすい環境の整備が欠かせない。やさしい日本語の普及は、日本人と外国人とのコミュニケーションを大きく向上させるはずだ。自治体からの情報発信を充実させるだけでなく、住民一人一人が身に付け、いざというときに使えるようにしたい。

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