社説:温室ガスゼロ目標 具体的計画の提示急げ

お気に入りに登録

 菅義偉首相は2050年に国内の温室効果ガスの排出を実質ゼロにすると宣言した。地球温暖化に歯止めをかけるパリ協定の目標達成に向け、日本は他の先進国の周回遅れと批判されてきた。日本は世界有数の二酸化炭素(CO2)排出国であり、脱炭素社会実現へ明確な意思を示したことは評価できる。

 ただし、これまでの出遅れの分、ハードルは高くなっている。限られた時間内に困難な施策を確実に実行しなければならないからだ。政府はまず実質ゼロ達成へ向けた具体的な計画を示し、強い決意を持って実施を急がなければならない。

 15年に採択されたパリ協定は、産業革命前と比べて世界の気温上昇を2度未満、できれば1・5度に抑えることを目指す。欧州連合(EU)と英国などは50年、中国は60年までにCO2排出を実質ゼロとする目標を示している。実質ゼロとは、温室ガスの排出量と森林が吸収する量が差し引きゼロになることだ。

 日本のこれまでの目標は50年に今より80%削減すること。実質ゼロ達成については、今世紀後半の早期実現に向け「努力する」とするのみだった。今年3月に国連に再提出した30年までの目標も従来の「13年度比26%減」に据え置き、国内外から批判を浴びた。

 日本の温室ガス排出量は世界第5位。18年度はCO2換算で12億4千万トンに上った。日本が温暖化防止に果たすべき責任は重い。国際的な孤立化の恐れも指摘され、菅首相は削減の意思表示をこれ以上先送りできないと判断したのだろう。

 日本の50年ゼロ達成には毎年3%ほどの削減が必要となる計算。国内のCO2排出量の4割は発電所などに由来する。18年度の電源構成は実績で火力77%、再生可能エネルギー17%、原発6%だった。現在の「エネルギー基本計画」は30年度の電源構成を火力56%、再生エネ22~24%、原発20~22%程度とする。このまま火力発電への依存を続けては50年ゼロには届かない。

 排出ゼロ達成のためには火力発電所の廃止を進め、風力発電や太陽光発電など再生エネが電源構成に占める比率を大幅に引き上げるなど、エネルギー政策の大転換が不可欠だ。菅首相は基本計画改定を急ぐよう政府会合で要請した。産業界や自治体と共に将来の電源構成について議論を徹底する必要がある。

 菅首相は温室ガスゼロに向けて、原発なども含むあらゆる選択肢を追求する考えを表明した。東日本大震災に伴う福島第1原発事故の後、各地で原発が停止し、審査の長期化や地元の意向などの影響で再稼働の動きは鈍い。重大事故の危険、安全対策や廃炉の膨大な費用などは無視できない。原発再稼働により温室ガス削減を図ることに国民の理解が得られるかは疑問だ。脱原発も視野に、原発の比率を可能な限り引き下げた上での実質ゼロ達成を求めたい。

秋田の最新ニュース