社説:学術会議、国会論戦 疑問は深まるばかりだ

お気に入りに登録

 菅義偉首相が日本学術会議の会員候補105人のうち6人の任命を拒否した問題は、菅政権発足後初の国会論戦の焦点になっている。野党の追及に対し首相は拒否理由の説明を避け続け、「論点ずらし」との批判を浴びている。

 政府方針に異論を唱えたことのある学者を排除したのではないかとの疑いは深まるばかりだ。首相には野党の質疑に正面から答えることを望みたい。

 明らかにすべきは6人がなぜ、どういう経緯で任命を拒否されたかに尽きる。6人は憲法や歴史学の研究者で、安全保障関連法などを批判したことがある。これが排除しようとした理由ではないかとの疑いは拭えない。もしそうなら、首相の人事介入により日本学術会議法が保障する会議の独立性が損なわれたことになる。

 菅首相は必ずしも会議側の推薦通りに会員を任命しなくてもいいとの見解を繰り返し、学術会議の組織改革の必要性を主張している。旧7帝国大所属の会員が多く、私立大所属者や女性、若手が少ないなどとして、会員の多様性を考慮したとした。

 しかし任命拒否した6人のうち3人が私大の学者で、若手や女性も含まれ、任命拒否により多様性はむしろ後退したと言える。野党から矛盾を突かれて答弁に窮する場面もあった。

 学術会議関係者からも首相の認識違いを指摘する声が上がっている。法は「優れた研究または業績がある科学者」から候補を選ぶと定めており、実績豊富なベテランが多いのは当然。首相の批判が当たらないのは明らかだ。約2千人の連携会員のうち45歳未満の研究者たちは独自に提言を発表しており、若手の活躍の場も設けられている。

 学術会議の会員構成や推薦方法、活動内容などに問題があるとすることで任命拒否を正当化しようという狙いがのぞくが、論点のすり替えと言わざるを得ない。識者からは「対応が後手後手で危機管理に失敗した」と指摘されるありさまだ。

 菅首相は会員任命の決裁に当たり、6人を除いた名簿しか見ていないことを改めて認め、6人のうち1人を除いては名前も知らなかったと述べた。6人を除外する方針は、決裁前に杉田和博官房副長官から報告されたことも明らかにした。

 杉田氏は当初から、会員候補の中に任命できない人が複数いると首相に報告したとされていた。首相発言は杉田氏の関与を公式に認めた形だ。任命権者ではない杉田氏が6人の任命拒否を実質的に決めた可能性がある。判断の根拠は何か、関与が法律上適切だったのかを明らかにすることが必要だ。

 菅首相は「総合的、俯瞰(ふかん)的な観点から判断した」などと具体性を欠く言葉を繰り返し、答弁書を棒読みする場面が目立つ。これでは国民の理解を得られない。説明責任の重さを認識し自らの言葉で語ってもらいたい。