社説:日米電話会談 信頼関係の構築を急げ

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 菅義偉首相は米大統領選で勝利を確実にした民主党のバイデン前副大統領と初の電話会談を行った。バイデン氏に祝意を直接伝え、日米同盟の強化を確認した。「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向け連携する方針でも一致した。

 トランプ大統領が敗北を認めないため、米国の政権移行がスムーズに進まないことも懸念されているが、外交や安全保障に空白はあってはならない。菅氏がバイデン氏との信頼関係構築を急ぐのは当然だ。今後も緊密な意思疎通を図り、日米を取り巻く問題に連携して対処してほしい。

 菅氏が日米同盟の強化を呼び掛けたのは、中国の海洋進出や北朝鮮の核・ミサイル開発を意識してのことだ。バイデン氏は同盟強化の重要性を認めた。さらに中国公船が周辺海域で領海侵入を繰り返す沖縄県・尖閣諸島について、米国による防衛義務を定めた日米安全保障条約第5条の適用対象だと明言した。米国の姿勢に変化がないことを確認した意味は大きい。

 日本は経済分野では中国と関係が深い。米国、インド、オーストラリアなどと連携してインド太平洋構想を進め中国をけん制する一方で、関係改善も図りたいのが日本政府の立場だ。トランプ政権下で深まった米中対立は、バイデン政権でも続くとみられる。日本は両大国の間に立って緊張緩和に向け橋渡し役を務めるべきだ。

 「米国第一」を掲げたトランプ氏は在日米軍駐留経費負担(思いやり予算)の大幅な増額を求め、巨額の米国製防衛装備品の購入を迫ってきた。2021年度以降の思いやり予算に関する日米両政府の正式交渉が電話会談に先駆けて始まったが、米側は巨額の負担要求を見送ったもようだ。バイデン氏勝利確実の情勢が影響したのであれば歓迎したい。

 両国が今後も冷静な議論を通じて安全保障の適正な負担を巡り共通理解を深め、同盟強化につなげることを期待する。同時に在日米軍の展開や日米地位協定の在り方、沖縄の過重な基地負担を見直す議論も進めてほしい。

 菅氏は北朝鮮による日本人拉致問題解決への協力も要請した。バイデン氏は北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長と会談をするとしても、北朝鮮が非核化へ向けた厳しい条件をクリアすることを求める考えを示している。このため、早期の米朝会談の実現は見通せない。日本は米朝会談に向けて何ができるか検討すべきだ。

 菅氏とバイデン氏は新型コロナウイルス対策や気候変動問題でも協力することで一致した。国際協調を軽視し、同盟・友好国との関係までも傷つけたトランプ政権からの米国の方向転換は世界が待ち望んだものだ。日本が足並みをそろえることで、国際協調の実が上がることを期待したい。

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