社説:女川原発再稼働 幅広い意見聴取が必要

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 東北電力女川原発2号機(宮城県女川町、石巻市)の再稼働に必要な地元の同意手続きが終了した。過酷事故を起こした東京電力福島第1原発と同じタイプの原子炉で、東日本大震災の被災原発としては初めてだ。

 立地自治体の宮城県、女川町、石巻市の3首長が同意や容認を表明した。原子力規制委員会の審査に合格してから8カ月余り、2022年度以降の再稼働が現実味を帯びてきた。

 村井嘉浩知事は「雇用創出など地域経済の発展にも大きく寄与する」と再稼働を評価。一方で「住民の安心・安全の確保が不可欠だ」と述べた。

 だが住民には重大事故時の避難計画への不安が根強い。福島原発事故では放射性物質が拡散し国土を汚染、多くの人が今も避難生活を強いられている。住民の不安解消なくしての同意は拙速と言わざるを得ない。

 問題は避難道路が狭くてカーブが多い上、離島を抱えるなど十分な安全確保が難しいことだ。原発から5キロ圏内の住民の避難に最長で3日弱かかると県は試算、深刻な交通渋滞が原因としている。

 避難中に被ばくする恐れも拭えない。避難計画の不備を理由に、同意差し止めを求めて市民が仮処分を申し立てたのは当然だ。差し止めは認められなかったが、避難道路を整備し不安を解消してから同意の可否を議論すべきだったのではないか。

 重大事故が立地自治体以外に広く被害を及ぼす恐れがあることも考慮すべきだ。30キロ圏内にある美里町は立地自治体だけで同意を判断する現行の枠組みについて、範囲拡大を求める考えを示している。山形県知事も隣県への十分な配慮を求めた。

 範囲拡大では茨城県にある日本原子力発電東海第2原発の先例がある。立地自治体の東海村が「責任が重過ぎる」として拡大を要請。その結果、30キロ圏内の5市が対象範囲に加わった。

 女川原発でも範囲拡大は可能なはずだ。再稼働までまだ時間はある。福島原発事故が広範囲に及ぼした被害と影響を考えれば、立地自治体以外からも意見を聴くのは不可欠だ。個々の再稼働を国会で議論することも視野に入れるべきだろう。

 「トイレなきマンション」と言われる原発は稼働に伴い使用済み核燃料が出ることも指摘しなければならない。敷地内のプールなどに保管しているが、容量の限界に近づいているのが実態だ。再稼働が進めばさらに増え、行き場を失いかねない。

 使用済み核燃料を化学処理して再利用する国策「核燃料サイクル」も行き詰まっている。肝心の再処理工場などの稼働時期は不透明なままだ。放射性廃棄物の最終処分をどうするかも依然として見通せない。

 再稼働に際しては、こうした問題も忘れてはならない。国の原発政策そのものが、数々の難しい課題を抱えていることを直視する必要がある。

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