社説:RCEP署名 自由貿易拡大の契機に

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 日本と中国、韓国、東南アジア諸国連合(ASEAN)10カ国、オーストラリア、ニュージーランドの計15カ国は「地域的な包括的経済連携(RCEP=アールセップ)」に合意し、協定に署名した。関税削減により、日本からアジア圏への工業製品や農林水産物などの輸出拡大が期待される。

 RCEPにより国内総生産(GDP)と人口がそれぞれ合計で世界の約3割を占める最大級の経済圏となる。日本にとっては貿易額が1位の中国、3位の韓国が含まれる初の経済連携協定(EPA)だ。これまで政府は協定名を「東アジア地域包括的経済連携」としていたが、署名に伴い英語名に近い「地域的な包括的経済連携」に改めた。

 日本には一貫して自由貿易の推進のため、通商協定に取り組んできた流れがある。安倍前政権は環太平洋連携協定(TPP)、欧州連合(EU)とのEPA、日米貿易協定を、菅政権は先月下旬に日英EPAを相次いでまとめてきた。

 今回のRCEP署名で、日本は自由貿易の足場をほぼ世界全域に築いた。日本の貿易額に占める自由貿易協定のカバー率は従来の5割強から約8割に上昇する。両政権によって成し遂げられた成果といえよう。

 日本産の自動車部品など工業製品に参加国が課す関税は段階的に下げられ、輸出企業に追い風となる。関税削減はTPPなどより低い水準とはいえ、経済界からは歓迎の声が聞かれる。

 安価な輸入品が増加する可能性もある。マツタケや紹興酒、マッコリなどは関税が将来的に撤廃される。業務用の冷凍野菜加工品なども段階的な関税削減対象だ。一方、日本が重要項目に位置付けるコメや牛豚肉などは輸入の関税削減対象から除外され、生産者保護が図られる。

 保護主義が世界に広がる中、日本が自由貿易を拡大する環境を整えてきた意義は大きい。その恩恵を一部輸出企業に限らず、幅広い業種に及ぼしたい。菅義偉首相が官房長官時代から力を入れてきた農林水産物、さらには日本酒などの輸出増加にもつなげられないか。

 残念なのは交渉開始時から参加してきたインドの離脱だ。対中貿易赤字の拡大懸念などが背景にあるとみられる。インドは対中国のけん制役を担うと期待されていた。日本は粘り強く参加を働き掛けるとともに、参加国との連携強化を図りたい。

 「トランプ後」に米中対立が終わるとは限らない。アジアには両国の板挟みになるのを懸念する国もある。対立の構図が協定に持ち込まれるのは避けなくてはならない。

 もともと日本との経済的つながりが深い中国、韓国とは、RCEP署名により一層の関係強化も期待される。参加15カ国が協定の定める貿易と投資のルールを順守し、公正な関係を築いていくことで、世界の自由貿易拡大の契機としたい。

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